第3回 「年功排除」なんてとんでもない
2024.07.16
年功賃金は日本だけのものではない
賃金に関する言説の中には、「年功徹底排除」や「脱年功」など、年功賃金を日本特有の悪弊として扱うものが少なくありません。しかし、これは初歩的な誤りです。年功賃金は日本だけでなく先進国に共通して見られる現象であり、「年功賃金の経済的合理性」ということは労働経済学の教科書にも記載されている基本的な知識です。
不動産の営業パーソンやタクシーの運転手など一部の職種を除いて、介護職を含む大多数の職種において、年功賃金は合理的です。
年功序列という言葉を作ったのはアメリカの経営学者ジェームズ・アベグレンです。1958年に書いた『日本の経営』の中で、年功序列、終身雇用、企業内労働組合のことを「日本的経営の三種の神器」として紹介しました。
資料:独立行政法人労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較』
しかし、賃金と年齢との間に相関があるのは日本だけではありません。図1は年齢別の賃金格差を諸外国と比較したものです。どの国も年齢が上がるほど賃金が高くなる傾向があり、日本はむしろ、この中ではその傾向が弱い方です。
神田 靖美 氏
リザルト株式会社 代表取締役
人事制度のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表。介護事業所を始め中小企業の人事制度づくりに従事。現在、『高齢者住宅新聞』に『今こそ知りたい介護分野の賃金・評価制度』などを連載中。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科MBAコース修了。