第4回 基本給制度の作り方

2024.08.19
神田靖美の基礎から解説!賃金制度

賃金制度には鉄則がある

冒頭から私事で恐縮ですが、筆者は以前、賃金制度専門のコンサルティング会社に勤めていました。45歳のときにそこを退職して、大学院のMBAコースに入学しました。修了後はコンサルティング業で独立することを視野に入れていました。そのとき困り果てたのが、「神田式賃金制度」とも言うべき、独自の賃金制度を全く構想できなかったことです。勤めていたコンサルティング会社には独自の賃金制度があり、どの依頼主様にもその賃金制度を提案していました。依頼主企業様によって賃金水準が高い低いという違いはありますが、仕組みはどこも同じです。筆者も当然、その賃金制度しか作ったことがありませんでした。しかしまさか、辞めた勤務先のノウハウで商売をするわけにはいきません。訴えられるリスクもさることながら、同じことをやるのでは、何のために大学院まで行くのかわかりません。そうは言っても、独自の賃金制度を作れる見通しは全く立ちません。途方に暮れました。

しかしその悩みは、一冊の本に出合うことによって解決しました。賃金理論の嚆矢である小池和男・法政大学名誉教授(故人)の『仕事の経済学』(2005年、東洋経済新報社)です。同書は、知的熟練を促す賃金の特徴は「社内資格給」「範囲給」「査定付き定期昇給」の三つだと言っていました。たしかにこの3点さえ備えていれば、どんな賃金制度でも使えるような気がします。逆にどれか一つでも欠けていれば、その賃金制度は使えません。そしてこの3点さえ踏まえれば良いのなら、オリジナルの賃金制度はいくらでも作れます。まさに天啓に打たれたような気がしました。これこそが賃金制度の鉄則です。

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神田靖美

神田 靖美 氏

リザルト株式会社 代表取締役

人事制度のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表。介護事業所を始め中小企業の人事制度づくりに従事。現在、『高齢者住宅新聞』に『今こそ知りたい介護分野の賃金・評価制度』などを連載中。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科MBAコース修了。

https://www.result.tokyo/