第2回 評価で賃金を決めることは、高業績企業への第一歩
一人当たり利益を280万円増やす人事制度
読者の皆様の中には、「評価をしたくらいで会社の業績が上がるのか」と懐疑的な方もおられることと思います。これはもちろん上がります。そうでなければこの連載を行う意味がありません。
イギリスのシェフィールド大学とロンドン大学は1997年、「競争戦略」「品質」「製造技術」「研究開発」「人材活用」という5つの活動がそれぞれどの程度、労働生産性と従業員一人当たり利益に影響を与えているかを調べました。その結果、労働生産性に対しても従業員一人当たり利益に対しても、人材活用の影響が最も大きいという結果が出ました(須田敏子『HRMマスターコース』2005年、慶應義塾大学出版会)。人材活用は企業にとって、最も重要な活動です。
さらに人材活用のうちどういう活動が業績に影響を与えるのかについては、HPWPと呼ばれる説があります。ハイパフォーマンス・ワーク・プラクティシーズの頭文字を取った名称であり、日本語には訳されず、そのままHPWPと呼ばれます。あえて訳せば「高業績人事制度」とでもなりましょうか。これは次の13の制度で構成されています。
- 従業員との、業績情報の共有
- 職務分析
- 昇進は既存従業員優先
- 定期的な従業員意見調査
- 単純な業務からの解放システム、QCサークル、従業員参加プログラム
- インセンティブ給与
- 教育訓練
- 苦情申し立て制度
- 試験による人材採用
- 評価による賃金決定
- 人事評価を行うこと
- 評価による昇進決定
- 多数の候補者からの採用
13の制度のうち3つが評価に関することです。
1995年、アメリカで968の企業を対象にした調査では、非常に大雑把に言うと、これらの人事制度の導入率が、平均より34%高い企業は、退職率は1.3%低く、従業員一人当たり利益が280万円多く、従業員一人当たり利益は190万円多い傾向があるという結果が出ました。調査が行われた1995年の円相場終値である、1ドル103円で計算しました。評価をすることは、高業績企業への第一歩です。
神田 靖美 氏
リザルト株式会社 代表取締役
人事制度のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表。介護事業所を始め中小企業の人事制度づくりに従事。現在、『高齢者住宅新聞』に『今こそ知りたい介護分野の賃金・評価制度』などを連載中。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科MBAコース修了。