第3回 評価にはさまざまな方法がある
一口に評価と言っても、実にさまざまな方法があります。今回はその中で主要なものについて、一部事例も交えてお話しします。
絶対評価と相対評価、成果評価
評価の手法は絶対評価と相対評価、そして成果評価に大別されます。絶対評価は評価基準があり、結果を点数で表す方法です。評価基準のことを「絶対基準」というので、このように呼びます。読者の皆様の会社が、「・・・しているか」という基準がある評価をしているとしたら、それは絶対評価です。
相対評価は評価基準がなく、単に「この人が1番、この人は2番、・・・」というように順位だけを決める評価方法です。「この人は何点」という結果はなく、結果は順位で表されます。
評価基準がない評価など、荒唐無稽な話だという声が聞こえてきそうですが、専門的な研究では、相対評価の方が優れていることがわかっています。1986年に行われた研究では、売上、生産量、クレームなどの指標と評価結果の相関係数(一方の値が大きければ、もう一方の値も大きくなる傾向を表す数値)は、相対評価が0.66、絶対評価が0.21というように、相対評価の方が3倍以上高くなりました。1995年に行われた研究では、生産量や欠陥率などの指標との相関係数を見た結果、相対評価は0.45、絶対評価は0.36でした(髙橋潔『人事評価の総合科学』2010年、白桃書房)。
つまり絶対評価より相対評価の方が、より貢献している人により高い評価を下す傾向が強いということです。両方の分析とも、一つの分析結果から判断したものではなく、メタ分析といって、複数の分析結果をさらに分析したものであり、信頼性は相当高いといえます。
成果評価は、仕事の成果だけに着目する評価手法です。もちろん成果という評価基準がありますが、人物人柄とか行動特性とかいう主観的なことを評価するわけではなく、成果という客観的なものを評価するので、絶対評価とは区別されます。
神田 靖美 氏
リザルト株式会社 代表取締役
人事制度のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表。介護事業所を始め中小企業の人事制度づくりに従事。現在、『高齢者住宅新聞』に『今こそ知りたい介護分野の賃金・評価制度』などを連載中。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科MBAコース修了。