第7回 目標管理シートの作り方
前回の当欄では、目標管理と呼ぶための条件について言及しました。そのひとつに、「目標は明確であり、時限的であり、目標管理シートに記述される」ということがありました。今回は目標管理シートの作り方についてお話しします。
なぜシートが必要なのか
目標管理シートを使うことが必須である理由は、まず管理上の必要性です。目標は個人で異なるので、文字にして記録しておかなければ管理できません。
目標管理の直接のモデルは、ゼネラル・エレクトリック社(GE)で行われていた「マンスリー・レター」だと言われています。GEでは1940年代から、担当者が月次の目標や達成のための活動、達成・未達成の基準などを記した手紙を上司に提出し、上司はこれに目標の達成度を記入して返送していました。
もっともGE社もマンスリー・レターをゼロから構築したわけではなく、スミディという人が、前職の勤務先で考案した「マネージャーズ・レター」という活動をGEに持ち込んで改善しました。これを当時GEの経営コンサルタントであったピーター・ドラッカーが、著書で「目標と自己統制による管理が行われている」と紹介し、ここで初めて「目標管理」という言葉が誕生しました。
さらに、スミディもマネージャーズ・レターをゼロから考案したわけではなく、それ以前にデュポン社やGM社が、これの元になる活動をしていました。こうなるといったいどこに起源があるのかわからなくなりますが、旧約聖書やギリシャ哲学にまで、今日で言う目標管理に関する記述があると言われています(奥野明子『目標管理のコンティンジェンシー・アプロ―チ』、2004年、白桃書房)。とにかく、こんにち目標管理と呼ばれている活動は、発足の当初から紙に書かれて行われていました。
第二に評価する人・される人の負担を軽減させるということです。前回の当欄でお話ししたとおり、目標管理には率や指数といった値がいくつか登場します。これらをできる限りシート内で自動計算するようにして、評価する人・される人の負担を減らします。
第三に、目標の達成率を上げるということです。目標管理シートに書いたら、その内容は上司や経営者、そして筆者のようなコンサルタント業者に見られます。志ある人なら、目標を達成できないことは恥ずかしく、自分の能力のなさを露見することになるというプレッシャーを感じます。目標の研究で名高い心理学者ハイディ・グラントは、「私はこれをやる」と他人に誓うことは、目標の達成率を上げる効果があるといっています(『やってのける 意志力を使わずに自分を動かす』2013年、大和書房)。
神田 靖美 氏
リザルト株式会社 代表取締役
人事制度のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表。介護事業所を始め中小企業の人事制度づくりに従事。現在、『高齢者住宅新聞』に『今こそ知りたい介護分野の賃金・評価制度』などを連載中。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科MBAコース修了。