第1回 「検索」から「生成」へ。あなたの隣に24時間働く有能な秘書を

2026.03.16

はじめに

はじめまして。株式会社船井総合研究所の菅野と申します。私は普段、介護業界に特化したコンサルタントとして、全国の介護事業所様の経営サポートや業務改善のお手伝いをしております。

最近、テレビやニュースで「生成AI(せいせいエーアイ)」や「ChatGPT(チャットジーピーティー)」という言葉を耳にしない日はないのではないでしょうか。しかし、介護現場の皆様とお話ししていると、「なんとなく凄そうだけど、自分たちには関係ない」「難しそうだし、怖い」「個人情報は大丈夫なの?」といった、不安や戸惑いの声を多くお聞きします。

結論から申し上げますと、生成AIは介護現場でこそ、今すぐにでも使うべきツールです。私のクライアント様の中には、生成AIを導入したことで、事務作業などのバックオフィス業務にかかる時間が半分になったという事例も実際に出てきています。

本コラムでは全12回にわたり、介護現場の事務長や施設長、管理者の皆様に向けて、「明日から使える生成AI活用術」を分かりやすく解説していきます。

記念すべき第1回目は、細かい操作方法に入る前に、まずは「そもそも生成AIとは何なのか?」「なぜ今、介護業界で注目されているのか?」という基本のキホンについて、専門用語を使わずに紐解いていきましょう。

「電卓」や「スマホ」が登場した時のことを覚えていますか?

「生成AI」と聞くと、何か得体の知れない未来の技術のように感じるかもしれません。しかし、これは歴史を振り返れば、私たちが過去に経験してきた道具の進化の延長線上にあります。

少し昔を思い出してみてください。かつて計算をする時は「そろばん」や「筆算」が当たり前でした。そこに「電卓」が登場しました。最初は「機械に頼ると計算力が落ちる」といった声もあったかもしれませんが、今では電卓を使わずに複雑な計算をする人はほとんどいません。

その後、パソコンが登場し、インターネットが普及し、携帯電話はスマートフォンへと進化しました。今やスマホなしの生活が考えられないように、テクノロジーは私たちの生活や仕事を便利に変えてきました。生成AIもこれと同じです。「電卓」「パソコン」「スマホ」に続く、新しい「当たり前の道具」が誕生した、と考えてみてください。

2022年11月に「ChatGPT」が登場してから、わずか2ヶ月で世界の利用者は1億人を超えました。これほど急速に普及したサービスは歴史上類を見ません。もはやこれは一時的なブームではなく、パソコンやスマホ同様、使わないという選択肢があり得ないインフラになりつつあるのです。

「検索」する時代から、「生成」してもらう時代へ

では、これまでのITツール(Google検索など)と、生成AIは何が違うのでしょうか。ここが最大のポイントです。

私たちが仕事で分からないことがある時、これまではインターネットで「検索」をしていました。例えば、「介護 夏祭り 挨拶文」と検索窓に入力すると、誰かが作った挨拶文のテンプレートや例文が載っているサイトがいくつも表示されます。私たちはその中から良さそうなページを選び、自分で読み込み、自施設に合うように手直しをして使っていました。

つまり、これまでのインターネットは「答えが載っている場所を探すツール」でした。

一方、生成AIは違います。生成AIに対して、

「介護施設で使うチラシを作成します。来月の夏祭りで、利用者様とご家族に向けた温かい挨拶文を作成してください。文字数は400字程度で、コロナ禍が明けて久しぶりの通常開催であることを盛り込んで」

とチャット(会話)で指示を出します。

すると、AIはインターネット上の情報を探してくるのではなく、その場であなたの指示通りの新しい文章を「生成(作り出す)」してくれるのです。

「探す」のではなく「作らせる」。これが決定的な違いです。既存の情報を探す手間、それをツギハギして加工する手間が一切なくなります。AIは、あなたが指示した瞬間に、あなたのためだけのオリジナルの回答を生み出してくれるのです。

なぜ今、「介護業界」でこれほど注目されているのか?

「うちはアナログな業界だから、AIなんてハイテクなものは合わないよ」そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、介護業界は人と人とのふれあいが中心であり、平均年齢も比較的高く、IT機器の操作に苦手意識を持つ職員さんが多いのも事実です。

しかし、私は「アナログな業界だからこそ、生成AIが必要だ」と断言します。

介護現場の仕事は、ケアそのもの以外に、膨大な「書類作成」や「事務作業」に追われています。

  • 日々の記録や申し送り
  • 会議の議事録作成
  • 事故報告書の作成
  • ご家族への連絡帳やお便り
  • 毎月のニュースレターや行事の企画書
  • ケアプランの作成やモニタリング
  • 行政への申請書類や加算の計算

これらに費やす時間は、皆様の残業時間の多くを占めているはずです。

生成AIは、まさにこの「文章を考える」「まとめる」「アイデアを出す」という作業が大得意なのです。

例えば、苦手な職員さんが多い「事故報告書」。「いつ、どこで、誰が、どうした」という事実と、「再発防止策が思いつかない」という悩みをAIに話しかけるように入力するだけで、AIは適切なビジネス文書として報告書のたたき台を数秒で作成してくれます。

あるいは、会議の音声をスマホで録音しておけば、AIがそれを文字起こしし、さらに「決定事項」や「ネクストアクション」を整理した議事録にまとめてくれます。

人手不足が深刻化する中、人間がやるべきなのは「心の通ったケア」や「利用者様との対話」です。一方で、書類作成や事務処理はAIに任せて効率化する。この切り分けこそが、これからの介護経営において、職員の負担を減らし、働きやすい環境を作るための鍵となります。

生成AI活用の判断軸とは何か――AIは「24時間働く有能な秘書」

では、現場で生成AIを導入する際、どのような基準で「使う」「使わない」を判断すればよいのでしょうか。また、「AIが作った文章をそのまま使って大丈夫なのか?」という不安もあるでしょう。

ここで皆様に持っていただきたいイメージは、「AI=24時間365日働いてくれる、文句を言わない有能な秘書や部下」です。

もし皆さんに新しい部下がついたとして、その部下に仕事を頼む時を想像してください。「来月のシフト表の案を作っておいて」「あの件についてのお詫び状の下書きを書いておいて」と頼みますよね。そして、部下が作ってきた書類を、皆さんは必ず「チェック」するはずです。内容に間違いがないか、失礼な表現がないかを確認し、必要であれば「ここはもっとこう直して」と指示をして修正させ、最終的に上司である皆さんがハンコを押して完成させます。

生成AIとの付き合い方も、これと全く同じです。

【判断軸①:ゼロから自分で作るより、たたき台があった方が早いか?】

答えが「YES」なら、迷わずAIを使いましょう。0から1を生み出すのは大変な労力です。

しかし、AIに「60点〜80点の出来」でいいから下書き(たたき台)を作らせ、人間がそれを手直しして100点にする。これだけで、業務時間は驚くほど短縮されます。

AIは疲れませんし、何度修正を指示しても文句を言いません。

【判断軸②:最終責任は人間が持てるか?】

AIは非常に賢いですが、たまに嘘をついたり(ハルシネーションと言います)、事実とは異なるもっともらしい回答をしたりすることがあります。

したがって、「AIが出した答えをノーチェックでそのまま使う」のはNGです。必ず人間の目で確認し、内容が正しいか、利用者様への配慮が欠けていないかを判断する必要があります。

「AIに使われる」のではなく、「AIを使いこなす監督者」としての意識を持つことが重要です。

まずは「食わず嫌い」をやめることから

介護業界における生成AIの活用は、まだ始まったばかりです。しかし、一般企業の調査では、すでに7割以上の企業が活用を推進しているというデータもあります。この波は確実に介護業界にも押し寄せてきます。

「難しそう」と敬遠して、便利な「電卓」を使わずに筆算を続けるのか。それとも、新しい道具を味方につけて、自分たちの時間を生み出すのか。まずは「食わず嫌い」をやめて、AIという新しい仲間をチームに迎え入れる準備を始めてみませんか?

AIは、パソコンのスキルが高い人だけのものではありません。むしろ、文章を書くのが苦手な人や、アイデア出しに詰まっている人にこそ、強力な助っ人となってくれます。

次回は、いよいよ実践編です。

「じゃあ、具体的にどうやって始めたらいいの?」という疑問にお答えすべく、【第2回|生成AIの基本操作ー「習うより慣れろ」で始めるChatGPT。まずは挨拶文を作ってみよう】について、実際の画面イメージなども交えながら詳しく解説していきます。

登録は驚くほど簡単です。ぜひ、次回のコラムを読みながら、一緒に最初の一歩を踏み出してみましょう。

続きの第2回も同時公開中!

profile_kanno

管野 好孝​ 氏

株式会社船井総合研究所 介護福祉支援部 マネージング・ディレクター
「介護業界に特化した経営コンサルタント。船井総研で『ベストチームリーダー賞』を受賞し、6年連続指名数No.1の実績を誇る。生成AI活用を介護に導入した第一人者として、介護×生成AIのテーマでの講演実績も多数あり。

https://kaigo-keiei.funaisoken.co.jp/