2022年在宅サービスの運営指導対策 <第5回>

2022.08.03

1.運営基準のポイント(2)

①サービス提供の記録

介護の行政は記録主義です。記録で確認出来ない場合は、如何なる場合も認められません。何かの問題が起こった時に、事業所を守ってくれるのは記録です。記録は、確実に残すようにしましょう。


サービス提供記録には、その日に実施したサービスの内容、提供時間、担当者名の記載が必要です。具体的な利用者の状況として、サービス開始前のバイタルチェックの記録、食事の量、トイレの回数、その他で気づいた点などを記載しなければなりません。


また、サービス提供時間や送迎減算の有無の根拠として、送迎記録も重要です。到着時間、送迎の経路、搭乗者などがわかるように記録しましょう。


サービス提供記録に、最初から開始時間と終了時間が印字してあったり、開始時間と終了時間の記載がなかったりする記録を見かけます。サービス提供記録に最初から印字してある開始時間が10時。しかし、当日の送迎記録を見ると、到着が遅れて10時10分となっている。この時点で、そのサービス提供記録の信憑性は失われます。


手書きの手間を惜しんで、介護報酬の返還となっては意味がありません。必ず、サービス提供時間は、利用者毎の実提供時間を都度記入してください。サービス提供記録に、保険外サービスの提供時間や提供内容を記載してはいけません。必要な場合は、別に作成する必要があります。サービス提供記録は、単なる利用者の状態の観察記録ではありません。その日に行ったサービスの内容と共に、利用者の提供時の状況をできるだけ具体的・客観的に書きます。


そのため、摘要欄も空欄にしないで出来るだけ具体的に記載します。書き誤った場合は、必ず「見え消し」にします。見え消しは二本線では無く、一本で取り消し線を引き、その上部に書き直します。また、修正テープや修正液を使用してはいけません。サービス提供記録は、職員間で共有して、利用者や家族の求めに応じての閲覧が義務づけられています。記録の記載は殴り書きではなく、常に丁寧な文字で記入します。

②事業所の日誌等の整備

運営指導では業務日誌の提示が求められます。業務日誌で確認される項目は、①その日の利用者数、②管理者の職務、の2つです。その他の部分はサービス提供記録で確認されます。先の②については、管理者がしっかり一元管理を行っているかが確認されます。管理者は必ず業務日誌に目を通して、職員によって記載された内容について指示した内容をコメント欄などに記録しなければなりません。

③職員の研修計画と実施記録の整備

管理者の責務の一つに、職員の資質向上を計画的に行うことがあります。資質向上とは主に研修です。研修を計画的に行っていることの証として、運営指導では年間の研修スケジュールが確認されます。整備されていない場合は、管理者の業務に支障が出ているという理由で、管理者の兼務が認められません。


研修は、まず一部の職員に外部研修に積極的に参加させ、その後、他の職員に内部研修を設けて情報共有させることも必要です。内部研修スケジュールに入れる内容は、運営規程に盛り込まれた研修は当然として、利用者の権利擁護、虐待防止、身体拘束なども含めます。また、介護技術向上だけでなく、介護サービス提供方法や認知症ケア、感染症対策、個人情報保護、コンプライアンス対策にも研修の時間を取ることが大切です。


運営指導では、これらの情報や知識の研修にすべての職員が参加できて、事業所全体のレベルアップにつなげているか、また年間スケジュールによって計画的に行っているかを確認されます。


内部研修を実施または外部研修に出席した場合は、必ず研修記録を作成します。最低限の記載事項としては、実施日時、実施場所、参加者、研修内容、当日の資料などを記載して研修記録ファイルに保存します。当日のレジメに参加者の名前などを書いただけでファイルにとじているケースも見かけますが、これは単なるレジメファイルに過ぎません。記録を作成して保管しなければなりません。


小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。