介護事業経営の大規模化と介護保険外サービス<第2回>

2022.11.16

1.今こそ介護保険外サービスに注目すべき

国が政策として進める介護事業の大規模化。その方法の一つに介護保険外サービスがあります。現在の職員で営むことも出来るため、無理の無い事業規模からスタートする事が出来ます。利用者・家族のニーズにマッチした場合は、単独の事業化も可能です。しかし、保険外サービスで思い浮かべるサービスは、お泊まりサービス、掃除洗濯などの生活支援サービス、病院の付き添い等と言った介護保険サービスの延長線上のサービスが殆どです。延長線上ですので、そのサービス内容は皆似たり寄ったりで、事業所毎の違いを見いだすのが難しい状況です。これでは差別化にはなりません。現在の利用者家族のニーズも、日常生活の補完サービスであるレスパイト関連に集中しています。家族も生活の維持が最優先ですので、収入を得るために働くことが必要です。その勤務時間帯のレスパイトニーズが高いことは当然です。しかし同時に、現在提供されている保険外サービスの多くがレスパイト系のサービスに偏りすぎることも見逃せません。今後はレスパイトニーズへの対応と共に、より幅白い視野での新規サービスの開拓がビジネスチャンスとなります。介護保険サービスのような制度上の基準や縛りが無い保険外サービス市場の可能性は無限です。介護保険サービスの狭い視野で保険外サービスを考えては勿体ないのです。既定概念を捨てて、自由な発想で柔軟な取り組むことが、新しいニーズの発掘や開拓に繋がります。

2.人の確保と育成をどうするか

新しい介護保険外サービスを考えるとき、まずは今の現状を知ることから始めます。経営の3原則は、「ヒト、モノ、カネ」です。一つでも欠けても事業は成り立ちません。経営の3要素から何が出来るかを見ていきます。介護業界は慢性的な人材不足に悩まされています。ただでさえ忙しいのに、介護保険外サービスに介護職員を充てられない。これは、よく耳にする保険外サービスをやらない理由です。また、仮に人材を確保出来ても、教育研修の時間が取れないという理由もあるでしょう。なぜ、現在の職員を介護保険外サービスにも兼務させようとするのでしょうか。介護保険サービスでは、色々な資格や経験が求められるために、職員の確保に苦労する部分が多くあります。しかし、保険外サービスでは厳密な資格や経験は必要とされません。すなわち、職員の雇用は幅広く募集出来るのです。人材の育成も、しっかりとした業務マニュアルを作成して、業務を標準化することで対応が出来ます。

3.施設や事業所の設備を活用する

現在の施設や事業所にある設備を活用することを考えるのも一手です。介護保険サービスの提供時間が終了した後に、リハビリで使用するトレーニングマシンを会社帰りの地域住民に開放して、ミニフィットセスセンターに模様替えするなどの事例も増えています。また、施設の駐車場などを活用してフリーマーケットを開いたり、機能訓練室を使ってヨガ教室を開いたり、土日だけミニカフェや認知症カフェに様変わりする。今、所有する設備や備品を使って何が出来るかも考えて見て下さい。また、介護のノウハウや知識、経験も重要な財産です。この活用も検討しましょう。

4.ケアマネジャーの理解も重要

ケアプランを作成するケアマネジャーは、全額が利用者の自己負担であり、金銭的な負担を利用者に求める保険外サービスをケアプランに位置づけることへの抵抗は未だに大きいものがあります。そのため、保険外サービスを提案してもなかなか良い顔をしてくれません。この理由のひとつに、介護保険サービスだけで十分だという意識があります。利用者への保険外サービスの料金体系の説明でも介護サービスは1割負担で使えるのに、保険外サービスは全額を自己負担となります。この事の理解を得ることがなかなか難しいのです。サービスの明確な違いと合理的な料金説明を行う必要があります。それ以上に、利用者が使いたいと思って頂く事が重要です。


小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。