介護事業経営の大規模化と介護保険外サービス<第3回>

2022.11.22

1.介護保険外サービスを自由に組み合わせる

介護サービス事業者が手がけることの出来る保険外サービスは千差万別です。一般的に行われている保険外サービスは、訪問介護であれば病院の付き添いや家政婦サービス、介護タクシーも介護保険外の保険外サービスの一つです。近年、脚光を浴びているサービスが、旅行などへの付き添いサービスです。介護タクシーと組み合わせて国内旅行を提供するサービスもあります。旅行以外でも、観劇、観戦、レストランでの食事などの付き添いのニーズは多くあります。また、定期的な安否確認・見守りサービスはすでに普及しています。急な慶弔関係で、家族が泊まりがけで出かける必要に迫られたとき、事前にケアプランの位置づけが必要なショートステイなどは利用できません。そのような時に対応するエイジドシッターサービスなども考えられます。散歩の同行や話し相手サービス、墓参り代行、買い物代行に草木の世話など、ニーズと可能性は無限にあります。このような介護保険ではカバーできない、生活支援分野における介護保険外サービスと介護保険サービスをパッケージしたプランの提供も可能性を広げます。介護保険外サービスは自由設計が可能で、料金体系も需給バランスを考えて設定できるからです。

2.富裕層などを対象としたサービス

高齢者の富裕層向けにターゲットを絞った、高級オーダーメイドサービスの提供も検討すべきです。高齢者本人だけでなく、その家族に対するサービスも考えられます。各種相談・プランニングサービス、親に対するサービスとして、遠方の家族に代わっての話し相手代行サービス、退院後の親のお世話、認知症の親の見守りサービス等々です。看取りに特化した訪問看護サービスや、リハビリテーションに特化した介護保険外サービスも成功事例が多々出て来ています。看取りに特化した訪問看護サービスは、24時間体制で在宅での看取りに対応して看護師が交代で付き添い介護を提供します。保険外のリハビリテーション・サービスは確実に身体の改善や回復に繋げています。介護保険サービスは、提供時間や提供体制に制度上の制限があるために、必要十分なサービスが提供出来るとは言えません。保険外サービスであれば、制度に縛られること無く、必要にして十分なサービスを提供する事が出来ます。

3.保険外サービスの提供対象は限定される

保険外サービスの提供対象となる利用者は、一定以上の所得や資産がある利用者となります。低所得の利用者には、保険外サービスのニーズは無いと考えてください。利用者の負担能力に応じて、提供するサービス内容や価格を変えていく料金システムの設定も検討します。他の事業者ではマネの出来ない差別化されたオンリーワンのサービスが必要です。サービスを提供する職員の上質なホスピタリティも求められます。ホスピタリティは高所得者向けの高額サービスでは特に必要不可欠なスキルです。高価なサービス提供をする施設では、その設備においても高級な雰囲気や上質な備品が重要となります。しかし、そこまでのサービス提供は難しいと感じる経営者も多いでしょう。その場合は、どこまでの位置づけでのサービス提供なら可能かを検討すれば大丈夫です。利用対象とする所得階層の位置づけと提供サービスや価格設定のバランスを誤ると大変です。誰も利用してくれないことになります。いずれにしても、保険外サービスは提供サービスの質と中身で勝負することは当然ですが、提供場所での雰囲気やホスピタリティも重要であることを認識してください。

4.規定概念を捨てる

既定概念とは何でしょうか。一つは、介護はこうあるべき、福祉はこうあるべきという介護への想いや理念です。これは介護事業の運営においては非常に大切な概念ですが、保険外サービスを考えるときには弊害となります。介護サービスの括りの中で保険外サービスを考えては失敗します。広い視野で、斬新な発想を受け入れる経営陣の度量が大切です。誰もやっていないこと、誰もやろうとしないことの中に答えが埋まっています。保険外サービスの可能性は無限です。


小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。