AIの活用〜今の成功モデルは過去のものとなり時代は変わる<第2回>

2022.12.14

●コンピューターがケアプランを作る

現在のケアプランは、数値データよるエビデンスに基づくというよりも、担当するケアマネジャーの知識や経験によって作られているのが現実です。今後は蓄積されたエビデンス・データを活用して、AIを活用してコンピューターがケアプランを作る時代が来ると聞いたらどう思うでしょう。実はすでにシステムを開発する会社がいくつか設立されていて、実際に運用を始めています。例えば、自治体と契約して、40万人以上の利用者データの提供を受けて、それを分析してAIに反映させています。そのエビデンスがあることで、ケアマネージャーは自信を持ってケアプランを作成して説明出来るようになります。また、AIに任せっきりにするのではなく、例えばAIは、3種類の原案を占めして、最終的な判断をケアマネージャーが行う事でバランスをとっています。例えば、この状態の利用者にはこの種の機能訓練を一週間に二回、一回30分の頻度で行うと、半年後には60%の確立でイスから立てるようになり、50%の確立で1人での歩行が可能になる。近い将来、このようなデータ分析に基づいたケアプランがパソコンを使って、日常的に作成されるかも知れません。ケアマネジャーは不要になるのかというと、それは違います。コンピューターはあくまでも道具に過ぎません。道具は、使い手がいないと機能しません。こあくまでも、ケアプランの作成はケアマネジャーの業務です。このように過去データの分析結果から導かれた改善率などに基づいて、最もその利用者にとって改善効果が期待出来る介護サービスをケアプランに位置づけることを、科学的介護と呼んでいます。

●厚生労働省のデータ収集事業が動き出した

厚生労働省は、2017年10月から定期的に「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」を開催して、科学的介護を導入するためのデータ収集方法とその分析、活用法についての検討を重ねて来ました。厚生労働省は、そのためのデータベースを構築して、「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業によるデータベース(VISIT)」、「既存のデータベースを補完するデータベース(CHASE)」の2つを稼働させました。このうち、VISITでは訪問・通所リハビリテーション事業所が算定する加算の算定要件にされました。しかし、その稼働率は低く、1割にも満たなかったのです。その理由は、紙ベースのデータを、コンピュータに打ち込むという二度手間の負担が事業者に敬遠されたのです。後発のCHASEでは、この部分の改善策として、介護記録ソフトによる効率化が図られました。そして、令和3年4月、2つのデータベースは統合されて、LIFEとして現在に至っています。1割にも満たなかった稼働率も、5割を超えるようになり、多くの事業者がLIFEを活用するようになっています。

●科学的介護は介護事業所の評価にも繋がる

厚生労働省の収集データの分析結果をケアプランの作成に活用するAIシステムや、LIFEは、同時に介護事業所の評価にも繋がります。例えば、平均的なADLの改善率が55%とします。A事業所は平均を下回り50%の改善率。B事業所は平均を上回り60%であった場合、B事業所の報酬はアップし、A事業所はダウンさせるという成功報酬の根拠となっていくことが想定されます。介護をやっていれば良い時代から、結果や成果が報酬に直結する時代へと、確実に時計は進んでいます。今後は、介護事業のビジネスモデルが大きく変わっていくことは避けられません。令和6年度介護保険法改定審議も12月で終了となります。その変化の波が見え始めています。


小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。