共生型サービス〜介護に固執することなく多角化を進める<第3回>
●共生型サービスは現状のままで許認可が取れる
平成30年の介護報酬改定で新設された共生型サービスの最大の特徴は、介護サービス事業所が現在の設備、人員は現状のままで障害福祉サービスの指定を取る事が出来ることです。設備投資や人件費の発生はありません。経費が変わらない状態で、障害のある利用者の受入は純粋な稼働率のアップとなります。これまで訪問介護だけに設けられていました。その理由は、唯一、訪問介護の許認可要件が障害福祉サービスの居宅介護と重度訪問介護の要件を同時に満たすからです。しかし、居宅介護と重度訪問介護は介護保険制度の訪問介護の指定要件を満たさないため、一方通行での特例でもありました。現在は、居宅介護と重度訪問介護の事業者も介護の訪問介護の許認可を受けることが出来るようになっています。同様に、介護保険のデイサービスが障害福祉サービスの生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービス等の許認可を受けようとするとき、サービス管理責任者の配置などの人員基準等が高いハードルとなる場合が多いのですが、共生型では、サービス管理責任者の配置が無い場合などは、基準該当サービス相当の共生型サービス費を算定することとして、その分の報酬を引き下げることで問題を解決しています。一定の資格要件を満たしている場合は、所定の加算を算定することが出来ますし、すべての指定基準を満たしている場合は通常の報酬を算定出来ます。
●訪問介護、通所介護、短期入所、小規模多機能が対象
現在の共生型サービスは、介護保険サービスでは訪問介護、通所介護、短期入所。障害福祉サービスは、居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所、自立訓練(機能訓練・ 生活訓練)、児童発達支援、放課後等デイサービスとなっています。また、小規模多機能型居宅介護も共生型サービスの併設が可能ですが、その場合は通所介護と短期入所に限られて、訪問サービスは提供出来ません。障害福祉のデイサービスである生活介護の許認可を受けようとすると、最低定員が20人からのため、そのための物件の確保も大きな課題です。しかし、共生型での許認可の場合は10人定員でも許認可を受けることが出来るため、非常にハードルが低い状態で障害福祉サービスへの参入が出来るというメリットがあります。デイサービスと放課後等デイサービスの併設によって、高齢者と障害児が交流する、いわゆる富山型デイサービスも正規の制度下で実現します。まずは共生型からスタートして、有る程度のノウハウが蓄積された時点で、本格的に障害福祉サービスに参入することも現実的な話になっています。
●訪問介護では障害福祉と併用が可能
訪問介護の場合は、同等の内容のサービスであれば、障害を持つ利用者に対しては、介護保険サービスで区分支給限度額を超過した分から障害福祉サービスの請求に切り替えることが出来ます。これによって、限度超過による10割負担の心配が無く、必要にして十分なサービスの提供が可能となります。一つの事業所が介護保険サービスと障害福祉サービスの両方の許認可を持っている場合は、同じ事業所で同じサービスをシームレスに、利用者が2つのサービスを受けていることを意識すること無く提供することが可能となるため、多くの訪問介護事業所はすでに障害福祉サービスの居宅介護、重度訪問介護の許認可を受けています。このように、障害を持つ利用者にとっては非常にやさしく制度になっています。令和6年度介護保険法改定においても、国が主導して進められる介護事業経営の大規模化。その方法の一つとして、障害福祉サービスへの参入も検討すべき時期に来ています。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。