介護保険部会意見の検証 その2(4)
4.通いの場の仕切り直し
令和3年度介護保険法改正で、重要ポイントとして設定されたものに、通いの場がありました。しかし、コロナ禍の影響を最大限に受けて、自粛を余儀なくされたために、令和6年介護保険法改正において、仕切り直しが盛り込まれています。この通いの場が進まなかった事もあって、訪問介護と通所介護の軽度者の市町村への移行が先送りとなったと言えます。それが先送りになった理由は、市町村での受け皿となる総合事業などが、特に地方に於いて整備が遅れていることが大きな要因でした。現時点で市町村への移行を強行すると、確実に介護サービスを受けることが出来ない介護難民が発生します。市町村事業をある程度、全国均一レベルにまで整備した上で移行すべきとの尤もな意見が多数となっています。現状を見ると、平成28年から総合事業に移行した旧予防訪問介護、旧予防通所介護である第一号事業については、単に移行しただけなので全国の自治体で9割程度の自治体が整備が実現しています。しかし、サービスA(緩和した基準)は50%程度、サービスB(住民主体)に至っては、8割以上の自治体が未整備であるとの資料が出されています。
そのため、令和3年の介護保険法改正での重要なキーワードが「通いの場」でした。通いの場とは、①, 体操や趣味活動等を行い、介護予防に資すると市町村が判断する通いの場であること。②, 通いの場の運営主体は、住民であること。③, 通いの場の運営について、市町村が財政的支援を行っているものに限らないこと。 ④, 月1回以上の活動実績があること。とされています。
介護予防事業の推進政策として通いの場の類型化等を進めるとともに、ポイント付与や有償ボランティアの推進等、参加促進を図るための取組を進めることが重要とされています。ポイント付与とは、介護予防等を目的として65歳以上の高齢者が地域のサロン、会食会、外出の補助、介護施設等でボランティアをした場合にポイントを付与することを言います。たまったポイントに応じて、商品交換、換金等を行う仕組みです。住民主体の多様なサービスの展開のために、有償ボランティアに対して謝金を支出できるようにすることや、人材確保のためのポイント制度等を創設するなど、総合事業の担い手を確保するための取組を多角的に進めることが盛り込まれています。有償ボランティアの謝金とは、通いの場などの参加者に対して、提供時間で有償ボランティアとしての社会参加・就労の機会を設け、例えば商品の配達 450円/1時間、自動車ディーラーの営業車輛の洗車 10,000円/1ヶ月、商店街自治会の花壇整備 1,000円/1回、コミュニティ情報誌のポスティング 4円/1枚×320部(1週間)、地域の高齢者宅の庭整備 5,000円/3日などの謝金を払うことを言います。
人材確保のためのポイント制度とは、地域医療介護総合確保基金を活用した「介護人材確保のためのボランティアポイント」のことで、若者、中年齢者、子育てを終えた者、高齢者が、1,都道府県等が実施する介護分野への入門的研修等の各種研修の受講。2高齢者の通いの場や介護施設等での介護の周辺業務(清掃、配膳、見守り等)などのボランティア活動。などを行った場合にポイントを付与する仕組みを言います。これらの取組は、近い将来の軽度者の総合事業への移行を想定しての準備対策の意味も含まれていると考えるべきです。この通いの場が、今後においてどこまで普及するかによって、今回先送りされた軽度者の市町村への移行が現実味を帯びてくると言えます。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。