コロナ禍で進むICT化とその普及への課題(1)

2023.03.08

【第一回】求められる業務改善と効率化

・補助金の活用

厚生労働省は介護職の業務改善、効率化策として、介護ロボット、見守りセンサー、インカム、介護記録ソフトといったICT化の促進を次々に進めています。業務の明確化と役割分担の推進として、見守りセンサーを。記録、報告様式の工夫として、介護記録ソフトを。情報共有の工夫として、インカム等です。介護ロボットについては、過去の介護報酬改定において、何度も介護ロボット加算等が検討課題に挙がっていましたが、未だに実現していません。しかし、今回に於いては、介護ロボットによる業務効率化についてのモデル事業が実施されるため、介護報酬算定の期待が高まっています。
介護事業者のICT関連投資での負担軽減策として、地域医療介護総合確保基金を利用したICT導入支援事業などがあります。これは、職員数によって支給限度額が異なり、最大で260万(職員数31人〜)が支給されます。また、その限度額を上限として、費用の四分の三までが支給されます。しかし、実際の実態を見ると、非常に厳しいものがあります。まず、申請期間が自治体によって異なり、かつ、1カ月しか受付期間設けられていません。また、年度での予算額が決まっているため、申請が多い場合は抽選となります。非常に狭き門の助成である点が問題です。しかし、これ以外にもIT導入補助金などが有りますので、ICT化で活用できる補助金の有無を行政窓口や販売業者に確認すべきです。

・先行する見守りセンサーの導入

介護ロボットなどに先行して、介護報酬の加算における算定要件や、人員基準の緩和要件として先行しているのが、見守りセンサーです。令和3年度介護報酬改定においても、特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームにおける夜勤職員の配置基準の緩和や、夜勤職員配置加算における算定要件の緩和に繋げられています。これは、業務の効率化の実現が、モデル事業などによって評価出来たことが大きいと言えます。見守りセンサーによる特例を利用することで、夜勤職員の人件費も削減できますし、夜勤職員配置加算が算定しやすくなります。どちらに於いても、経営上の収益の向上に繋がります。それ以上に、夜勤職員の負担軽減となることが、大きな意味を持つと言えます。

・インカムによって移動距離と時間を削減

夜勤職員の配置基準の緩和措置で、もうひとつ、インカムなどを活用していることで更なる夜勤職員の削減が可能となります。夜勤に限らず、日中においてもインカムを利用して情報の伝達や確認をすることで、職員の移動距離とそれに伴う時間ロスを大きく削減できます。介護施設で無くても、例えば、デイサービスで職員の死角が生じるような間取りで有った場合、その部分が視界に入っている職員にインカムを通して確認する事で、自ら見える場所に移動して確認する時間ロスを減らすことが出来ます。介護施設に於いても、各階の入浴順をインカムを通じて連絡を取り合うことで、入浴順を待つ入所者の効率的な移動が可能となります。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。