業務継続に向けた取組の強化(BCP)〜感染症編〜(2)
【第二回】職員の安全確保が最優先で求められる対策
業務継続計画(BCP)は、いつ発生するか分からない感染症での被害を最小限に留めながら、平常時に行うべき事前の対策と、感染者が発生し、クラスターとなる緊急時における対策をあらかじめ決めて、計画に落とし込むことを言います。その為には、事前にどの業務を継続するか。その方法と手段を、BCP委員会でしっかりと検討する必要があります。クラスターが発生し、濃厚接触者に認定された職員は2週間の自宅待機で出勤出来ません。さらには、派遣社員やパート職員、清掃業者なども家庭内感染を恐れて、出勤しなくなります。そうなると、通常時のケアや業務を全て継続することは困難です。そこで、事前に継続すべきケアや業務と、休止や縮小する業務をあらかじめ振り分けておき、緊急事態でも業務を続ける準備をします。
自然災害同様に、感染症の場合の基本方針を定めます。この時、①、利用者(入所者)の安全確保、②、サービスの継続(組織)、③、職員の安全確保の、3つの観点から基本方針を取りまとめます。このとき、入所者―組織職員の順に重要性が高いという認識は間違いです。一番大切なのは自分自身です。次に現場(組織)、最後に生存者(利用者)と続きます。幾ら徹底した感染対策をしても、クラスターが発生した場合、まずは自分たちを守ることを最重要と考えるべきです。職員が安全を確保出来てこその介護であり対策です。そして、次に重要なのは、組織的な介護サービスの継続です。介護は個人で行うものでは無く、介護施設や介護事業所として、組織的に行うものです。特に、被災した状況の中では、スタンドプレーは厳禁で、定められたルールの元で行うべきものです。その2つの要素を満たした上で、利用者入所者への介護サービスを継続すべきものです。
介護は個人で行うものでは無く、組織的に行うものです。身勝手な職員の個人プレーで職員に感染が拡大する事は絶対に避けなければなりません。
自然災害と違って、感染症ではヒトへの影響が大きくなります。感染拡大時の職員確保の方策と、人のやり繰り策をあらかじめ検討しておくことが重要です。そのために、他の事業所や施設、地域の協会、協議会などとの協力協定を結ぶなどの事前準備が必要となります。しかし、感染症のクラスターが発生した介護施設、事業所に、他の施設や事業所が職員を派遣することは考えにくく、外部の援助を当てにしない自力での介護サービス継続の可能性も検討しておくべきでしょう。また、行政機関からの援助も、医師や看護師に限られるのが一般的で、現実的には介護サービスを担当する職員が極端に不足します。甘い予測での人員確保策は、絵に描いた餅となります。自分が逆の立場であればどうするかを視点に、現実的な対策を纏める必要があります。 また、物流の混乱などにより、コロナ禍の発生時に起こったマスクやゴム手袋など、感染予防に必要な物資の極端な不足という事態も想定しなければなりません。感染対策に必要な物資については、平時から備蓄を進めておくことが必要です。
基本方針
本計画に関する基本方針を以下のとおりとする。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。