業務継続に向けた取組の強化(BCP)〜感染症編〜(3)
【第三回】感染疑い者の発生が出た場合の対処
利用者や職員の中で、息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状や、発熱、咳、頭痛などの比較的軽い風邪症状等が確認された場合には、速やかに新型コロナウイルス感染症を疑って対応します。また、コロナウイルスの初期症状として、嗅覚障害や味覚障害を訴える患者がいることが明らかになっていますので、普段と違うと感じた場合には、速やかに医師等に相談するように職員に指示します。 職員は、かぜの症状や発熱等の症状が認められる場合には出勤を行わないことを徹底しなければなりません。感染が疑われる場合は主治医や地域で身近な医療機関、受診・相談センター等に電話連絡し、指示を受けることを徹底します。
職員は、利用者と密接に関わり、特に施設系のサービスでは入所者と日常的に長時間接するため、一層注意が必要です。職員自身が、病原体を拡げないよう日頃から健康管理に心がけなければなりません。特に、介護施設・事業所において流行を起こしやすい感染症は、多くの場合、主に介護施設・事業所の外で感染して持ち込まれています。職員だけでなく、新規利用者、面会者、ボランティア、実習生等が、感染症の病原体を外部から持ち込まないように留意することが大切です。感染の疑い者がいる場合の状況について、より早期に把握できるように、管理者が中心となって、毎日の検温の実施、食事等の際における体調の確認を行うことで、日頃から利用者や入所者の健康の状態や変化の有無等に留意することが重要となります。職員に関しては、管理者は、日頃から職員の健康管理に留意しながら、職員が職場で体調不良を申出しやすい環境づくりに努めることが特に重要となります。
感染症を疑うべき症状としては
①、発熱:体温については個人差がありますが、おおむね 38°C以上の発熱もしくは平熱より 1°C以上の体温上昇を発熱とします。
②、嘔吐、下痢など: 嘔吐・下痢に加えて、発熱、発疹や意識がはっきりしない等の症状がみられるときには特に注意が必要で、ノロウイルス感染症も疑われます。
③、咳・痰・のどの痛み等:高齢者に多い呼吸器疾患には、医療・介護関連肺炎があり、この中には誤嚥性肺炎等も含まれます。誤嚥性肺炎の予防には口腔ケア等が有効です。高齢者の結核では呼吸器症状を伴わないことがあります。繰り返す発熱(微熱)、体重減少、 食欲低下、ADL の低下等にも注意が必要です。
④、発疹等の皮膚症状:高齢者における発疹等の皮膚症状には加齢に伴う皮脂欠乏によるものや、アレルギー性のもの等もあり、必ずしも感染症によるものとは限りません。
新型コロナウイルスは、鼻汁、唾液、痰の中などに多く存在します。PCR 検査や抗原検査では、これらを採取して検査を行います。PCR 検査も抗原検査も、検査の精度は 100%ではないので、きちんと検体が採取できても、例えば 本来は陽性なのに誤って陰性と出る偽陰性、反対に本来は陰性なのに誤って陽性と出る偽陽性もあります。検査結果には、数日を要します。その間は、陽性の場合に備えて、休業の検討、感染拡大防止体制確立の準備を行います。 実際に、検査結果を待つ間に感染が拡大してクラスターとなった事例も聞きます。検査結果が陰性の場合は、入所、サービスを継続して施設などで経過観察を行います。検査結果が陽性の場合は、基本的に入院となります。医療機関に対して、新型コロナウイルス感染状況(感染者であるか、濃厚接触者であるか)も 含めた入所者の状況・症状等を可能な限り詳細に情報提供を行う必要があります。 現病、既往歴等について情報提供を行うとともに、主治医や嘱託医との情報共有に努めます。しかしながら、医療機関のベッドに空きが無い場合は、入院することが出来ずに施設で治療を続けて、施設が病院化することとなります。在宅利用者の場合は、自宅療養となる場合があります。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。