令和5年度最重要ポイントは何か (1)

2023.05.10

【第一回】新たなる複合型サービスの行方

2024年度は、定期巡回随時対応型訪問介護看護と複合型サービス(現在の看護小規模多機能型居宅介護)以来、12年振りに在宅サービスに新型サービスが創設されます。これは、通常国会で審議中の改正介護保険法案に盛り込まれているために確実でしょう。この新サービスは、訪問介護と通所介護の複合型であると言われています。複合型としては、すでに小規模多機能型居宅介護と訪問看護の複合である看護小規模多機能型居宅介護が存在しています。

訪問介護と通所介護の複合型(まだ未確定です)については、2024年度から新サービスとして創設される事のみが決まっています。その詳細や指定要件、報酬体系などについては、2023年度において介護給付費分科会において行われる令和6年介護報酬改定審議の中で検討され、その後、厚生省令として発出されます。厚生労働省の審議時点での説明から訪問介護と通所介護の複合型である可能性が高いといえます。複合型サービスの類型などを設けると記載されていることから、複数の組み合わせが検討される可能性もあります。仮に、複数の複合型が誕生する場合、可能性があるのは通所介護と訪問看護の組み合わせでしょう。

この新たな複合型サービスを読み解く場合のヒントが、厚生労働省 老人保健健康増進等事業として三菱総合研究所が公表している「地域の特性に応じた訪問介護サービスの提供体制のあり方に関する調査研究事業」の資料にあります。「訪問系サービスと通所系サービスを組み合わせた包括報酬制の複合型サービスが仮に創設された場合について」という調査報告がそれにあたります。この調査は、令和6年度に創設する複合型サービスを念頭に置いていることは明白です。このなかで「訪問系サービスと通所系サービスの複合型サービスの利用者にとってのメリットについては、訪問介護系サービスと通所系サービスの組み合わせの場合・訪問看護系サービスと通所系サービスの組み合わせの場合いずれについても、市町村・都道府県ともに「訪問サービスと通所サービスを通じて、切れ目のないケアを受けることができる」が最も多かった。としています。この記述から、新型複合型サービスは、通所サービスをベースに、訪問介護と訪問看護を組み合わせることが前提であることが分かります。さらに、「訪問系サービスと通所系サービスを組み合わせた包括報酬制の複合型サービスが創設されるとした場合」という設問があり、新たな複合型サービスは、月額包括報酬の報酬体系であることが分かります。

また、本事業のまとめにおいて、「訪問系サービスと通所系サービスを併用することの居宅介護支援事業所のメリット」が報告されています。このことから、新たな複合サービスは、小規模多機能型のように施設ケアマネジャーの配置は求めずに、居宅介護支援事業所がケアプランを担当する方向である事が分かります。

さらに、小規模多機能同様に、訪問サービス担当者に医療福祉関連の資格を求めないとした場合、これは大きな制度上の転換となるでしょう。訪問介護サービスは、介護職員の有効求人倍率が15倍前後という非常識な人材不足に喘いでいるのは初任者研修修了者などの医療福祉関連の資格が求められていることが最大の原因です。この解釈では、コロナ特例としての通所介護の介護職員による訪問サービスが大きなヒントになりそうです。コロナ禍の影響で通所介護サービスが休業等を行った場合、通所介護の介護職員が居宅を訪問してサービスを提供することが可能です。この時、担当する介護職員は医療福祉関連の資格は求められない。この新サービスでは、介護担当者に資格が求められないことが期待出来そうです。

いずれにしても、この新たなる複合型サービスは、通所介護、訪問介護、そして小規模多機能型との棲み分けがポイントで、これらのサービスからの転換などを含む地殻変動を誘発する可能性を秘めています。業界再編成が加速するかも知れません。

厚生労働省 老人保健健康増進等事業 三菱総合研究所
「地域の特性に応じた訪問介護サービスの提供体制のあり方に関する調査研究事業」

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。