令和5年度最重要ポイントは何か (2)
【第二回】ケアプランデータ連携システムによる逓減制の活用のススメ
令和5年4月20日から ケアプランデータ連携システムがスタートしました。ケアマネジャーは、毎月の提供票を作成し、担当事業所に紙で印刷して渡しています。担当事業所は、一月のサービスが終わったら提供票に実績を記載して担当のケアマネジャーに紙で戻します。結果としてケアマネジャーの机の上には、月初に提供票が100枚近く積み上がることになります。利用者が30人いて、各利用者に3つの事業所を位置づけていた場合、90枚の提供票が戻ってくるのです。この100枚近い提供票を給付管理ソフトに手入力しています。この作業だけでも2〜3日かかっている。また、作成した提供表を郵送、手渡しなどの作業にも数日を要しています。連携システムを使う事で、ケアマネジャーはPCの画面上で提供票を作成して電子データで担当事業所に伝送することで、郵送などの手間が無くなります。担当事業所は、一ヶ月のサービス提供が終了したら、画面上に実績を打ち込み、担当ケアマネジャーに電子データで戻すだけです。ケアマネジャーは、担当事業所から届いた電子データを給付管理ソフトに落とし込むことで作業が終わります。これによって、入力ミスでの返礼リスクも無くなるのです。ケアプランデータ連携システムが導入されることで、今まで3日程度かかっていた提供票の入力作業が、1日もかからないのです。圧倒的に業務は簡素化されます。
しかし、1事業所当たりで年間21,000円の利用料金が発生することを問題視する声も多く耳にします。これは、法人単位ではなく、事業者番号毎に徴収されるものです。事業の拡大策を取る法人に取っては、負担が増していくでしょう。しかし、圧倒的にケアマネジャーの手間が削減されることは間違いないのですから、担当事業所とその導入についてディスカッションを行って、事前に意思統一を図ることも重要となります。このシステムは、一方だけが導入していても意味が無く、導入する担当事業所が少なくても効果が薄いからです。
データ連携システムの導入にあたって想定される問題として、介護給付管理ソフトの対応状況があります。LIFEにおける介護記録ソフトの状況を見ても、ソフトのベンダーによって処理能力のバラツキが想定されます。ソフト側の対応状況次第では、必ずしも業務の効率化に寄与しないケースも出てくるでしょう。使用する給付管理ソフトを見極める必要があります。将来を見据えた場合は、費用対効果を考えながら、場合によっては乗り換えという選択も必要になってくるのではないでしょうか。
全サービス中、圧倒的に平均年齢の高い居宅介護支援事業所において、高齢化が進むケアマネジャーが、どこまで提供票のICT化に対応出来るかを懸念する声も多いようです。公益財団法人 介護労働安定センターによる令和3年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書において、平均年齢は居宅介護支援が最も高く 53.4 歳、訪問系が 48.6 歳、居住系が 47.8 歳、施設系(通所 型)が 46.3 歳、施設系(入所型)が 44.4 歳となっています。ICT化による業務の効率化も重要ですが、ケアマネジャーという職種の魅力度を上げて、ケアマネジャーを目指す人を増やして行くことも重要な課題であるといえます。
ケアプランデータ連携システムによって、圧倒的にケアマネジャーの業務効率が改善されることは間違いありません。3日間の入力作業が1日になれば、ケアマネジメントの質を上げて、結果として利用者に還元できます。また、逓減制の特例措置を活用して、ケアプラン件数を5件増やして44件まで担当することも現実的になるでしょう。5件とまでは行かなくても、数件の担当件数の拡大は可能です。その場合、事業所の収益も向上し、ケアマネジャーの件数手当などのアップにより処遇改善に繋がります。これらのことを勘案すると、このシステムの普及は時間の問題といえます。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。