令和5年度最重要ポイントは何か (4)

2023.05.31

【第四回】2024年法定研修改正とLIFEの位置づけ

令和6年度はケアマネジャーの法令研修が改正されます。今後は、根拠のある支援の組み立てが求められ、その基盤として適切なケアマネジメント手法と科学的介護(LIFE)等を学ぶ内容が組まれていくことになりました。LIFEについては、令和6年度介護報酬改定に於いて、居宅介護支援への加算が創設されることがほぼ確実な状況です。今後は、LIFEへのケアプランの提出と共に、サービス担当者会議において、担当事業所毎の利用者別フィードバック票を共有して検討し、必要に応じてケアプランに反映するといったPDCAサイクルの推進が求められるでしょう。その場合、LIFE活用を行っていない担当事業所が取り残される可能性も出て来ます。ケアマネジャーに対して、今後は根拠のある支援が求められたことで、エビデンスの一つとしてのLIFEの位置づけが強化されることは間違いないでしょう。LIFEの活用については、LIFEへのケアプランデータを提供すると共に、サービス担当者会議において、担当事業所がそれぞれのフィードバック票を持ち寄り、会議参加者間で共有して検討し、必要に応じてケアプランに反映させる形を想定しています。

また、終末期ケアを含めた生活の継続を支える疾患別マネジメントの理解として、心疾患、誤嚥性肺炎などの科目が新設されます。国が進める地域共生社会の実現と地域包括ケアシステムの推進の目的のひとつが、重度化しても介護施設に入所せず可能な限りの在宅ケアと在宅での看取りの実現にあります。そのため、在宅医療と在宅介護サービスが中心となり、一層の医療介護連携が求められることになります。この中で以前から指摘されている問題点として、ケアマネジャーの医療的知識の不足があります。そのため、医療的知識の習得に力点が置かれています。特に心疾患マネジメントと誤嚥性肺炎マネジメントに多くの時間を振り分けています。

制度・政策、社会資源等についての近年の動向に関する内容を反映として、地域共生社会、認知症施策大綱、ヤングケアラー、仕事の介護の両立、科学的介護、身寄りがない人への対応、意思決定支援等が盛り込まれました。近年、特に注目されているヤングケアラーの問題や仕事の介護の両立も、ケアプラン作成において重要な課題となっています。より家族の抱える諸問題に寄り添ったアセスメントやプランニングが求められます。各研修において受講時間が増やされて強化された科目が、職業倫理についての視点です。地域共生社会、科学的介護と言う部分で、エビデンス重視の指向が打ち出されていますが、介護は医療と異なり、単にアウトカムだけを求めているのではありません。介護は、本来は家族が行うべきものです。介護サービスは介護者が自分の時間を持ち、リフレッシュするまでを補完するレスパイトとしての機能が本来の目的です。いわゆる共助です。介護とは何か。ケアマネジャーの役割とは何かを見失ってはいけないということです。継続研修においては、必要な理念や考え方について理解しており、その理念や考え方について自分の言葉で具体的に説明できるレベルが修得目標とされました。このレベルに達するためには、表面的な理解では不可能です。必要十分以上の学びと解釈が出来て初めて達することが出来ます。ケアマネジャーには今まで以上の研鑽が求められると言うことです。

ケアマネジャーのなり手が減少を続けて、全サービス中、圧倒的に平均年齢の高い居宅介護支援事業所において、LIFE,ICT化、医療知識といった新たなスキルの修得が求められるのが、今回の法定研修改定です。現場レベルで、どこまで対応出来るかの不安も聞こえてきます。確かに、ケアマネジャーとしてのスキルアップも重要ですが、ケアマネジャーという職種の魅力度を上げて、ケアマネジャーを目指す人を増やして行くことも重要な課題です。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。