介護保険法とは何か。その改正の歴史 (3)

【第3回】 これまでの介護保険法改正②
2018年度の改正
2018年介護保険法改正は、以下の4つの柱に基づいて行われました。
1,地域包括ケアシステムの推進
2,自立支援、重度化防止に向けた保険者機能の強化
3,介護人材の確保、生産性向上
4,介護保険制度の安定性・持続可能性の確保
この改正による主な変更点は以下の6つです。
①自己負担が変更され、所得に応じて1~3割程度が自己負担とされました。
2018年8月から、介護保険の「利用者負担割合」が変わりました。「利用者負担割合」は、介護保険サービスを利用した際に、利用者が負担する割合を示すものです。これまでは、「年金収入280万円」を境にして、「280万円未満」なら自己負担は1割、「280万円以上」なら2割でした。2018年8月からは、「年金収入340万円以上」という新しい分類ができて、自己負担が3割になりました。ここで言う「年金収入」は単身世帯の場合です。夫婦世帯の場合は、「346万円以上」で2割負担、「463万円以上」で3割負担となります。影響がある人は3%程度と想定されました。
②高所得者ほど保険料の負担が増える総報酬割制度が導入されました。
それまで第2号保険料では、加入する医療保険の加入者数に応じて負担する介護納付金が一定額に決められている「加入者割」が採用されていました。しかしこの制度では、所得の低い人ほど相対的に保険料の負担が大きくなってしまうことが問題でした。この改正に於いては、負担能力に応じた負担とする観点から、介護納付金についても加入者の報酬に応じた「総報酬割」が導入され、2017年度から段階的に総報酬制を導入されたのです。総報酬割に切り替える改革は2017度から3年間かけて進められました。2017年8月からは2分の1、19年度は4分の3と段階的に導入を進め、全面移行は2020年度からでした。
③要介護認定の有効期間が従来の24ヶ月から36ヶ月に延長されました。
④新たな介護保険施設である「介護医療院」が設立されました。
いわゆる老人病院から転換となった介護療養型医療施設が、2006年度制度改正で廃止が決定しましたが、遅々として介護療養型介護老人保健施設への転換が進まずに廃止期限が延期され続けました。2018年制度改正で介護医療院が新たな転換先として創設差されました。介護療養型介護老人保健施設は、来年2024年3月をもって廃止となります。
⑤福祉用具の貸与料金の公表と平均価格が設定されました。
福祉用具については、貸与価格の適正化を図る観点から、2018年10月から商品ごとに全国平均貸与価格の公表や 貸与価格の上限 (全国平均貸与価格+1標準偏差)を設けるとともに、施行後の実態も踏まえつつ、概ね1年に1度の 頻度で見直しを行うこととなりました。
⑥介護サービスと障害福祉サービスを同時に許認可する共生型サービスが導入されました。
共生型サービスは介護保険サービスと障害福祉サービスを同時に許認可する制度です。この制度は、介護保険サービス事業所が障害福祉サービスを提供しやすくし、同様に障害福祉サービス事業所が介護保険サービスを提供しやすくすることを目的として導入されました。共生型サービスを活用することで、同一の事業所で介護保険サービスと障害福祉サービスの両方を提供することが可能となります。これにより、以下のような利点が期待されています。
1,障害者が65歳以上になっても、同一事業所を利用し続けることができる。
2,高齢者や障害児者にとって、利用できる事業所の選択肢が増える。
3,「介護」と「障害」といった枠組みにとらわれず、多様かつ複雑な福祉ニーズに柔軟に対応することができる。
4,地域共生社会の推進に寄与し、人口減少社会でも地域の実情に応じたサービス提供体制整備や人材確保が可能となる。
以上のように、2018年改正は、その内容が多岐にわたる大改正であったのです。

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。