令和6年介護報酬改定を取り巻く諸問題の総括(1)

2023.08.09

【第1回】令和6年度ケアマネジャー法定研修改正

令和6年度からケアマネジャーの法令研修が改正されます。この中で、根拠のある支援の組み立てが求められたことは大きな注目ポイントです。その基盤としては、適切なケアマネジメント手法と科学的介護(LIFE)等が位置づけられています。LIFEについては、令和6年度介護報酬改定に於いて、居宅介護支援への加算が創設されることが検討されています。今後は、LIFEへのケアプランの提出と共に、サービス担当者会議において、担当事業所毎の利用者別フィードバック票を共有して検討し、必要に応じてケアプランに反映するといったPDCAサイクルの推進が実現される可能性があります。現在のフィードバック票の活用は、介護施設、事業所単位での活用ですが、サービス担当者会議での活用を実現することで、より広い視野での検討が可能となります。会議に参加するメンバーのスキルも大きくレベルアップが期待出来ます。この点を考えても、LIFEの将来性は非常に高いと言えます。LIFEは、近い将来の業界再編成に繋がっていく鍵となります。

また、終末期ケアを含めた生活の継続を支える基本的なマネジメント及び疾患別マネジメントの理解として、心疾患、誤嚥性肺炎などの科目が新設されました。従来のターミナルケアの科目は、終末期ケアに統合されます。国が進める地域共生社会の実現と地域包括ケアシステムの推進の目的のひとつが、重度化しても介護施設に入所せずに、可能な限りの在宅ケアと在宅での看取りの実現することにあります。そのために、在宅医療と在宅介護サービスが中心に位置づけられました。効率的な推進のために、医療介護連携が強く求められます。以前から指摘されている問題点として、ケアマネジャーの医療的知識の不足があります。その点を踏まえて、医療的知識の習得に力点が置かれたことは間違いないでしょう。

また、近年の動向に関する内容を反映するとして、地域共生社会、認知症施策大綱、ヤングケアラー、仕事と介護の両立、科学的介護、身寄りがない人への対応、意思決定支援等が盛り込まれています。特に注目されているヤングケアラーの問題や仕事と介護の両立は、ケアプラン作成において重要な課題となっています。より、家族の抱える諸問題に寄り添ったアセスメントやプランニングが求められることになります。各研修において受講時間が増えて強化された科目が職業倫理の視点です。地域共生社会、科学的介護のキーワードで、エビデンス重視の指向が打ち出されていますが、介護保険制度においては医療と異なり、単にアウトカムだけを求めているのではありません。介護は、本来は家族が行うべきものです。介護サービスは介護者が自分の時間を持ってリフレッシュするまでの時間を補完するレスパイトとしての機能が本来の目的です。利用者それぞれの自立と尊厳の問題、家族の抱える諸問題などについては、AIやICTでは対応出来ない部分です。データベースの構築によるエビデンスでも対応できません。介護度の審査に於いても、第一次と第二次があるように、ケアマネジャーが人として最終判断することは必然です。ケアマネジャーの役割とは何かを見失ってはいけないということです。

ケアマネジャーのなり手が減少を続けて、全サービス中、圧倒的に平均年齢の高い居宅介護支援事業所において、LIFE、ICT化、医療知識といった新たなスキルの修得が求められた法定研修改定。現場レベルで、どこまで対応出来るかの不安も聞こえています。確かに、ケアマネジャーとしてのスキルアップも重要ですが、ケアマネジャーという職種の魅力度を上げて、ケアマネジャーを目指す人を増やして行くことも重要な課題となっています。

出典「介護支援専門員資質向上事業ガイドライン」の 発出について
別紙1 介護支援専門員実務研修 各科目のガイドライン P7

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。