令和6年介護報酬改定を取り巻く諸問題の総括(2)

2023.08.17

【第2回】デイサービスの収支差率が大幅な減少傾向に

2月に公表された令和4年度介護事業経営概況調査によると、デイサービスの収支差率が令和2年の3.8%が、令和3年は1.0%と。2.8%の急落となっています。収支差率とは利益率のことで、100万円の収入が合った場合、令和2年は38,000円だった利益が、令和3年には10,000円になった事を示しています。これだけ収支差率が下がると、令和6年介護報酬改定の審議に於いて、報酬引き上げの論点が議題となってくるでしょう。しかし、デイサービスにおいては、それ以上に経営的な問題が浮上してきています。

最近、デイサービスなどの稼働率が中々戻らないという経営相談が増えています。デイサービスはコロナ禍の影響を強く受けた介護サービスです。最初の一年目に於いては、数ヶ月の休業を余儀なくされたり、行政の依頼で定員の半分でのサービス提供を余儀なくされた時期もありました。また、利用者もサービスの利用を長期にわたって自粛するケースも多く見受けられました。そのような状況を経ての5類移行を迎えましたが、未だに利用者が戻ってこない、稼働率が上がらないと言うデイサービスが多くあります。法人規模の大小に関わらず、この傾向は、特にレスパイト中心の長時間デイサービスに顕著なようです。

これに対して、短時間型のいわゆるリハビリテーション型のデイサービスは、比較的早めに利用者が戻り、稼働率が安定していることが多いのです。それどころか、リハビリテーション型のデイサービスは不足している地域が多くなっています。その原因分析では、相談に来られるデイサービス経営者の見方はほぼ一致します。コロナ禍が長期化し、利用者がデイサービスを利用しない期間が一定期間に於いてあった結果、利用者が必ずしもデイサービスに通わなくても良いことが分かってしまったということです。コロナ禍以前は、ケアマネジャーの利用表に従って粛々と通っていた利用者が、5類移行後も戻ってこないケースが増えているのです。しかし、コロナ禍が長期化したことで自宅に引きこもる高齢者が増えた結果、体力や筋力の低下と共にフレイル・サイクルのリスクが高まり、健康状態の悪化が懸念されてきました。その結果、ケアマネジャーの判断でリハビリテーションを提供するデイサービス等をケアプランに位置づけるケースが増加しているのです。コロナ禍が収束する中で、明らかに利用者やケアマネジャーのニーズに変化が起こっています。その結果、デイサービスにおいて二極化が進み、明暗が分かれ始めています。これは、コロナが5類となってもコロナ禍以前の時間に戻るのでは無いと言うことを示しています。コロナ禍の3年弱の時間を経て、新たな時間に移行していると考えるべきです。利用者のニーズに変化が生じて、コロナ禍以前のやり方が通じないケースが出始めています。そのことを認識して、新たな時間に求められる介護サービスを提供する必要があります。経営者は時流を読み続けなければならないのです。

そもそもデイサービスは、介護サービス中で最も事業所数の多いサービスです。それは、利用者の獲得や職員の確保において、他事業所との競争が厳しいことを意味します。そして、デイサービスの事業所数は、小規模を含めると平成28年から令和5年の8年間の中で、ずっと43,000事業所で変わっていないのです。8年間の中で、多くの新しいデイサービスが開業しています。それなのに事業所数が変わらないと言うことは、新規開業の数だけ、従来の事業所が廃業に追い込まれていることを示しています。ある意味、デイサービスの事業主数は飽和状態にあります。利用者のニーズが大きく変わる中で、そのニーズに合わないデイサービスが淘汰されている現実が見え隠れします。

 

 

 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。