LIFEのフィードバック活用 (2)

2023.09.13

【第2回】LIFEの意味を知ろう 

LIFEが始まって2年弱の間、フィードバック票が暫定版であったことを理由に、LIFEにデータを提出するのみで、単に加算だけ算定するケースが大部分でした。問題は、利用者に加算として費用を負担頂きながら、何も利用者に還元して来なかったことにあります。利用者別フィードバック票の提供が始まった今は、その言い訳は通じません。しっかりと利用者にその成果を還元することが求められます実際に最近の運営指導において、LIFEの活用状況を確認されて、指導退所となるケースも増えて来ています。 

LIFEは、主に利用者の状態やケアの実績に関する情報を収集しています。収集したデータをもとに、施設・事業所単位/利用者等単位のフィードバック票が提供されます。また、自施設・事業所だけでは無く、全国と比較した相対的な状況等を確認すること出来るようになっています。LIFEのフィードバックにおいては、データから見える利用者の状態やケアの実績に関する情報はなく、「のような状態を目指していたか」「のようなケアを行ったか」といった情報と合わせて解釈することが重要でフィードバック票を気づきの「きっかけ」として、職員間、また利用者や家族と話をすることで、より良いケアに向けた議論を行うことが可能となります 

介護従事者は、利用者に直接ケアを提供しています。利用者の状態を評価した上、各利用者の希望や要望をふまえて、適切なケアを提供していく役割を担っていのです全ての利用者が質の高いケアを受けることができるように、介護従事者は、バーセルインデックスなど共通の評価指標を用いて利用者の状態の評価ができるようになることが先決で。そして、計画書等の情報やLIFEのフィードバック、日々の利用者との関わりを通して把握した情報を踏まえて、ケアの改善に取り組むことが大切となります。これらの役割分担の意味を理解して、定期的に共通の評価指標ですべての利用者を評価します。これらをやり続けることで、職員のスキルが確実にレベルアップします。その結果、介護施設全体のケアの質の向上に繋がります。利用者はより高いレベルのケアを受けることが出来るようになります。LIFEの効果は、利用者、職員ともに満足度がアップすることにあります。この点で、利用者に費用を負担頂く意味があるのです 

一般的に、サービス提供期間が長くなるほど、その利用者への固定概念が出来てしまします。Aさんは、こういう方なので、この介護を行わなければならない。という思い込みです。その結果、Aさんとは、正面から向き合うことだけが日常となります。LIFEがスタートしたことで、半年毎に共通の評価指標で評価を行うようになりました。その結果、Aさんの正面だけでは無く、横顔、後ろ姿などにも自然と目を向けるようになります。そこに新たな気づきが生まれるのです。 

例えば、「見た目がとても似ている利用者が3人居たとします。一人だけが肌が乾燥気味である事に気づいていました。しかし、乾燥肌である程度にしか考えていなかったのです。LIFEでの定期的な評価が始まると、その肌が乾燥している利用者が、他の2人より栄養状態が良くないことが判明したとします。この方に早急に、栄養改善プログラムを立てて対応した。」このような新たな気づきが、日常業務の中で起こることで確実に担当職員のスキルレベルアップさせることになりますこの作業プロセスを廻し続けることで、利用者への視点が確実に広くなり、ノウハウが構築されていきます。結果として、介護施設全体のケアの質の向上に繋がっていきます 

これがLIFEの求めるものです。LIFE加算の算定要件には、一つもアウトカム(成果結果)を求めるものはありません。算定のプロセスをやり続ける事だけを求めています。その理由は、プロセスをやり続けることで、時間の経過と共に職員のスキルが向上して、介護施設全体のケアの質が向上することで、結果としてアウトカムに繋がるからです。 

このLIFEの意味を職員の方々が理解する事が重要です。それが無いと、単にやらされている感や不満だけが募り、退職に繋がる懸念があります。 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。