LIFEのフィードバック活用(3)

2023.09.20

【第3回】フィードバック票の活用とPDCAサイクル

LIFEのフィードバック票は、事業所別、利用者別、加算別フィードバック票が提供されています。今後は、加算算定の為には、本格的にフィードバックの活用が必要となりました。この活用方法は各事業所のノウハウとなり、時系列のデータ資産として積み上げられていくことになります。ひいては、事業者間の格差を拡大して、差別化が加速する要因となっていくでしょう。今、しっかりとフィードバックの活用に取り組む事が重要な経営課題となっています。 

事業者別フィードバック票は、全国値との比較が前回データとの対比で表されています。ここでは、全国値を物差しとして、自分の施設の立ち位置を把握します。上回っている項目は、自施設の強みですので、さらに伸ばすことを目指します。下回っている項目は、要改善項目ですので、対応策を検討します。その結果は、次回のフィードバックで確認出来ます。その対応策と成果が、自らのノウハウとして積み重ねられて行きます。 

利用者別フィードバック票は、前回提出分との比較表での提供となっています。まず、利用者毎の現在の状況と時系列の推移を確認することから始めます。データ解釈時の注意点としては、指標の数値と変化は、必ずしもケアや状態の善し悪しを反映しないこと。利用者については、背景や介護サービスの利用目的、期間中に取り組んだ内容、入院や他のサービスの利用状況など、多様な要因が期間中の変化に関連する事などを担当職員間で理解しなければなりません。その上で、利用者の変化や提供した介護サービスの取組状況を考慮して、検討会議などで結果を共有して検討し、介護サービスの改善、ひいてはケアの質の向上に繋げることが活用の目的となります。利用者別フィードバック票自体はあくまでも資料であって、それ以上でも、それ以下でも無いことを理解しましょう。なぜ、その評価指標の数字が変化しているのかを、直接にケアを担当している職員が、多職種で議論を行う必要があります。そこには、日頃から問題意識を持って、如何に介護のプロとして利用者に接してきたかが問われます。また、すべての職員が各評価指標の意味を知らないことには始まらないでしょう。 

例えば、ADLの評価指標であるバーセルインデックスを活用して利用者を評価するとした場合、リハビリ職だけで評価、分析、検討するならば、その専門職の視点のみでの解釈となります。この時、介護職員、看護職員、生活相談員、管理栄養士、衛生士などが分析、検討に参加することで、各職種の視点での分析が加えられ、幅の広い解釈が可能となります。同時に各職種の知見が拡がっていきます。結果として、各職種のスキルアップ、レベルアップにつながり、引いては施設、事業所のケアの質の向上に繋がっていくのです。これが多職種連携のメリットであり目的です。 

フィードバック票の活用での注意点は、必ずしも全国値を下回っていたから、改善が必要とはならないことです。これは利用者データの悪化についても同様です。例えば、看取りに力を入れている施設の場合、BMIや食事の摂取量が平均よりも低いのは自然なことです。自分の施設の立ち位置を把握した上で、フィードバック票に向き合いましょう。 

このように、LIFEの活用を上手く機能させるためには、多職種が連携して、利用者の更なる状態の改善に取り組む必要があります。多職種連携における最大の課題は、介護業界における慢性的な人材不足です。各職種が集まってカンファレンスを行う時間が確保出来ないという事業所も多いでしょう。各加算の算定要件である多職種協働についても、事後報告に近い形で終わっているケースも多く見かけます。しかし、それでは各職種の知見が拡がらないですし、各職種のスキルアップ、レベルアップにつながり、引いては施設、事業所のケアの質の向上に繋がるというメリットが活かせないといえます。LIFEを活用するためには、同時並行としての業務改善、効率化に取組むことも重要です。 

厚生労働省:利用者別フィードバック 科学的介護推進体制加算サンプル

https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001103686.pdf 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。