LIFEのフィードバック活用(4)

2023.09.27

【第4回】LIFEのフィードバック活用を促進する方法 

サービス担当者会議などで活用する 

 利用者フィードバック票は、施設・事業所内だけの活用に留まりません。利用者や家族に渡して、近況の報告と今後の対応についてのディスカッションに活用出来ます。前回データとの比較で、項目毎にアップダウンの矢印が示されているので、多職種で検討した内容などに基づいて説明を行いましょう。科学的介護推進体制加算の利用者別フィードバック票では、数値や矢印がある事で、その理解が容易になります。エビデンスデータが提示されることで、その解説にも信憑性が増し、信頼性も高まるでしょう。また、サービス担当者会議でその利用者を担当する担当事業所間でも共有することで、エビデンスに基づいた検討が可能となります。その利用者が、デイサービスとデイケアを利用している場合、それぞれの検討結果と解釈を共有することで、より連携したケアが可能となります。デイケアで開催されるリハビリテーション会議に於いても、同様の効果が期待出来ます。他の担当事業所の同席は最小限ですが、その分、利用者や家族に対して、より深い説明と理解が期待出来ます。フィードバック票を上手く活用することで、目標の達成に向けて、担当事業所間での連携も加速することが期待出来るのです。 

 

科学的介護提供体制加算の評価シートで読み取る 

フィードバック票を活用する方法以外に、更に高いレベルでLIFEを活用する方法があります。ここでは、個人別データの活用方法を述べていきます。科学的介護提供体制加算を算定している場合、令和3年4月から算定したとすると、令和5年8月時点では、令和3年4月と10月、令和4年4月と10月、令和5年4月の計5回の評価シートが利用者毎に存在しています。それを、古い順から時系列に横に並べてください。利用者は高齢であるので、多くの項目に大きな変化は無いのが普通です。しかし、一部の項目に変化があった場合には、他の評価指標を含めて多職種で検討します。そうして、頭の中で時系列のグラフを描くことで、個人別のフィードバック票と同等の活用が可能となります。 

 

個人別の評価シートからLIFE活用を実践 

例えばADLの数値を、今回の結果と過去のデータとで結果を比較します。そうすると、評価点数が横ばい、または減少が見て取れたとします。この場合、ADLに絞って検討すると、リハビリテーションの結果が出ていないのだから、リハビリテーション・プログラムを見直すと言う結論になるでしょう。しかし、BMIの数値を見ると、全国値よりかなり点数が低くて、低栄養状態であることが分かったとします。さらに、食事摂取量のデータを見ると、こちらも全国値より、かなり低いことが読み取れました。これらを、リハ職、介護職、看護職、栄養士などの多職種で検討した結果、この利用者は日頃から食事量が少なくて低栄養状態であるために、体力や筋力が衰えているとの結論に達しました。そのために、リハビリテーションの成果が出ていないと判断しました。この場合の対策は、食事量を増やして栄養状態を改善する事が優先されるでしょう。その結果として、栄養状態の改善後も、ADLの点数が上がらない場合はリハビリテーション・プログラムを見直せば良いのです。このように、多職種が共同して評価項目を総合的に見ていくことがLIFE活用のポイントとなります。この方法を使って、個人データを活用する事で多くの情報を、多職種で共有して検討出来るようになります。フィードバック票が提供されるのは、LIFEにデータ提出してから数ヶ月後です。それを待っていては、時間のブランクが生じて、リアルタイムな対応が出来ません。評価した結果数値を素早く活用することで、更なる成果が期待出来ます。また、職員のスキルも向上します。このような方法で、個人別のLIFE活用がフィードバック票を待たなくても可能である事に気づくことで、他の介護施設に先行して活用ノウハウを構築することが出来ることになります。 

 

6月30日から本来のフィードバック票の提供が始まりました。いまは、全介護施設が横並び一線の状況です。しかし、取組が遅れると次第に格差が拡がります。早期に取り組む事が、大きなチャンスに繋がります。 

 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。