令和6年介護保険制度改正の中間検証 (1)

【第1回】2024年 介護報酬改定の論点
9月15日の社会保障審議会介護給付費分科会で、令和6年度介護報酬改定の第一ラウンドの審議が終了し、各サービスの論点が出揃いました。9月後半の業界団体ヒヤリングを挟んで、10月より第二ラウンドに突入します。
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定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護については、近い将来の統合、一本化に向けての議論が始まります。この2つのサービスは、類似点が多く、整理統合への議論が進んでいたものです。
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小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護については、第9期の介護事業計画においても国の重点化サービスで有ることから、その普及促進策が重要なテーマとなります。同時に、令和6年度介護保険法において、多機能型が機能訓練の場であることが明記されたことから、機能訓練関連の加算や算定要件の強化が行われると思われます。
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通所介護と通所リハビリテーション
通所介護と通所リハビリテーションについては、LIFEの活用と共に、自立支援への取組が、一層求められるでしょう。特に通所リハビリテーションについては、アウトカム(成果、結果)が何らかの形で介護報酬に反映されると思われます。ただし、LIFEの正常化が遅れていることもあって、成功報酬の具体的な導入は余り進まないと思われます。同時に、令和3年度介護報酬改定で細分化された入浴介助加算の区分Ⅱにおける算定率が10%以下と低すぎるため、単に報酬を引き下げただけという批判が出ています。この点についても、何らかの対策が取られるでしょう。
4. 訪問介護と訪問看護
訪問介護については、有効求人倍率が15.5倍と状況が悪化していることから、人材確保策が急務となっています。外国人研修生の訪問介護への対象拡大も検討されていますが、反対意見も根強く、予断を許さない状況です。訪問看護は、これまで同様に、リハビリ職の訪問リハへの規制強化が焦点となるでしょう。地域包括ケアシステムの深化と共に、大規模化とターミナルケアへの対応も加速すると思われます。
5. 居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所については、ケアマネジャーへの処遇改善加算の創設や、ケアプランデータ連携システムに関連するICT加算の創設などが論点となります。ただ、財源論が浮上してきていますので、余談を許しません。 4月にスタートしたケアプランデータ連携システムの登録事業者は7000と伸び悩んでいます。今後、LIFEとのシステム連携という話もあります。LIFEは、今後はケアマネジャーが主宰するサービス担当者会議での活用も現実味を帯びてくるでしょう。それによって、LIFEの立ち位置が一気に変わる可能性が高いと言えます。
6. 介護老人福祉施設と介護老人保健施設
介護老人福祉施設の論点は、重度者の増加に向けた医療的な対応の強化と、医療介護連携です。医師や看護師の配置が問題となっていくでしょう。介護老人保健施設は、在宅復帰をさらに求めると言うことで、長期滞在型に不利な報酬改定の方向が見えています。基本報酬の上位区分は、引き上げの機運が高まってくるでしょう。また、特養同様に医療面の充実と、リハビリテーションの強化も重要なテーマです。かかりつけ医薬剤調整加算の見直しも論点となっています。審議に於いて、多くの理事から、介護保険施設はかつて無い危機的な状況に陥っているとして、介護報酬の引き上げを求める声が相次いでします。介護老人福祉施設の要介護3以上の入居制限の緩和は、今回は見送られました。
出典 第218回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。