令和6年介護保険制度改正の中間検証 (2)

【第2回】介護報酬改定の大テーマの検証
今回の介護報酬改定の大テーマは、以下の4つです。
①地域包括ケアシステムの深化・推進
②自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
③介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
④制度の安定性・持続可能性の確保
①は、重度化し医療行為が必要となっても、可能な限り在宅で過ごし、在宅で看取るという地域包括ケアシステムの目的を更に進化させていくために、訪問看護や看護小規模多機能型などを充実させる方向です。デイサービスと訪問介護を組み合わせた新型の複合型サービスもこの括りで審議が進みます。また、ケアマネジャーが取り組むべき課題として、ヤングケアラー問題も取り上げられていくでしょう。経過措置が終わるBCPの強化も課題です。全体においては、感染症BCPでは策定済みが23.5%, 自然災害BCPは25.9%となっています。今後も作成する目処が立たない事業所が感染症で21.5%、自然災害で22%です。7割以上の事業所は、完成済み、もしくは策定期日の来年3月までに策定を終えるとしています。この状況から、経過措置の延長は無いと思われます。BCPは、その経過措置が来年3月で切れます。それ以降に未作成の場合は、運営基準違反として指導対象と成って、従わない場合は指定取消などの行政処分となります。今、運営指導においてBCPの作成状況が必ず確認されているようです。残された時間は、残り半年となっています。さらに今回は、非常災害対策が求められる介護サービス事業者を対象にして、訓練の実施に当たって、地域住民の参加を推進するための方策が検討課題となっています。また、3年間続いたコロナ特例が順次、廃止の方向が示され、10月から介護保険施設で、新型コロナウイルス感染症の退院患者(自施設から入院したものを除く)を受け入れた場合に算定できる退所前連携加算(500単位)については、算定可能日数を30日から14日と短縮されることが公表されています。
②は、LIFEの活用の拡大と成功報酬の導入です。訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算の創設の可否も大きなテーマです。通所リハビリテーションへの成功報酬の拡大などが注目ポイントとなるでしょう。リハビリテーション、口腔ケア、栄養マネジメントの三位一体の提供の強化も大きな論点です。口腔については、歯科専門職と多職種の連携をさらに促して、必要に応じて利用者に口腔に係る管理や歯科治療を提供するための方策が課題として示されています。栄養については、歯科専門職と多職種の連携をさらに促して、必要に応じて利用者に口腔に係る管理や歯科治療を提供するための方策が課題として示されました。そして、これまでプロセスのみが評価対象であったLIFE関連加算にアウトカムの評価を加えることの検討が始まっています。
③は、処遇改善の充実と3つの処遇改善加算の一本化、有効求人倍率が15.5倍を超えた訪問介護の対策。ICT化の促進がテーマとなります。また、EPA介護福祉士候補者及び技能実習生については、就労開始直後から介護職員として人員配置基準に算入することが検討されています。
④は、介護報酬における「やり繰り」の部分で、既存の加算を含めて見直しが成されます。介護報酬の算定要件の簡素化も大きなテーマとなっています。複雑化する制度の中で、利用者へのわかりやすさを実現するとともに、介護サービス事業所等における負担を軽減することが重要になっています。介護老人保健施設及び介護医療院の多床室の室料負担の導入についても。このテーマでの大きな検討課題です。
出典 第217回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。