令和6年介護保険制度改正の中間検証 (3)

2023.10.18

【第3回】小規模多機能型と必須となる機能訓練

  1. 多機能型の方向性の変化 

 令和6年度介護報酬改定審議の中で、小規模多機能型と看護小規模多機能型については、「更なる普及が求められる中、期待されるサービスを安定的に提供するなどのために、どのような方策が考えられるか。」という共通の論点が提示されています。

この2つのサービスについては、厚生労働省の最重点サービスとして位置づけられているに関わらず、未だに経営が安定しない状況が続いているのが現状です。その原因のひとつが施設ケアマネジャーの存在とされています。居宅介護支援事業所のケアマネジャーが利用者を多機能型に紹介する場合、結果として自らの利用者を手放す事と成り、その結果としてケアマネジャーが紹介をしません。そのため、過去の介護報酬改定審議においても、多機能型のケアマネジメントを居宅介護支援事業所に移すことが論点にあがっていましたが、使い放題を助長して管理機能が働かないなどの理由で見送られてきた経緯があります。

今回の審議に於いても、施設ケアマネジャーの見直しを求める声が多く、施設ケアマネジャーと居宅介護支援のケアマネジャーを利用者が選択できる「選択制」を提案する声も出ているようです。 

多機能型のケアマネジメントを居宅介護支援事業所が担当できるとすれば、ケアマネジャーにとっては、介護サービスの選択肢として多機能型を位置づけやすくなり、今まで以上に利用が進むことが期待出来ます。そして、今回の介護報酬改定でその可能性が高いと見ています。その場合、通所介護にとっては、確実に競合先となって行きます。 

 

  1. 必須となる機能訓練と進むデイサービスの業界再編成 

 令和6年度介護保険法において、看護小規模多機能型の役割に「機能訓練」が明記されました。今後は、多機能型に於いても機能訓練の場としての役割が強化されるでしょう。リハビリ特化型の多機能型も、今後の差別化の中で想定されます。その時、機能訓練を提供しない預かり中心のデイサービスは、更なる苦戦を強いられることになります。すでに、コロナ禍の影響で利用者のニーズやケアマネジャーの価値観が大きく変化して、機能訓練を提供しないデイサービスが選ばれなくなってきているのが現状です。

来年度に創設予定の新しい複合型サービスが、デイサービスと訪問介護、若しくは、デイサービスと訪問介護と訪問看護の組み合わせで有った場合、多機能型、デイサービスとの競合関係となることは避けられません。年末までに結論を出すとされた、自己負担2割の対象拡大(全体の20%から30%へ)が確定した場合も、確実に利用控えが生じて、使われなくなる事業所が出て来るでしょう。自己負担が倍額となっても、使いたいサービス、使わなければならないサービスで有ることが求められるのです。 

いずれにしても、令和6年度介護保険制度改正は、預かり中心の昔ながらのデイサービスにとっては大きな逆風となる可能性が高いと言えます。今のうちから、機能訓練への取組を始めないと手遅れとなるでしょう。そして、LIFEの活用は必須です。ただ、機能訓練への取組とは、パワリハの導入だけではありません。機能訓練には、椅子やボールなど、身近な備品を使って出来るプログラムが多数あります。重要なのは、利用者の身体能力を分析し目標を立てるアセスメント課程で、しっかりと利用者一人一人の状態を把握し、利用者に寄り添った機能訓練を提供出来るかです。 

デイサービスの事業所数は飽和状態にあります。平成28年から今に至るまでの8年間、事業所数が4万3千事業所から変わっていません。毎年、相当数のデイサービスが新規開業する裏で、同数の事業所が廃業しています。その事業所数が、多機能型のケアマネジメントの居宅介護支援事業所への移行や、新たな複合型サービスによって減少に転じる可能性があるのです。令和6年度介護保険制度改正を控えて、デイサービス経営者にはマネジメント力が問われています。 

 

デイサービス事業所数は、平成28年以降、43千事業所を推移。明らかに飽和状態である。 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。