令和6年介護保険制度改正の中間検証 (4)

【第4回】令和6年度介護報酬改定審議の方向を読む
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令和6年度介護報酬改定全体の注目ポイント
第一に、現時点で3種類ある介護職員処遇改善加算の一本化の審議です。一本化と言っても簡単ではありません。3つ其れ其れに異なる算定要件があるからです。最も現実的なのは、現行の3加算を廃止して、新たな処遇改善加算を創設する方法です。また、居宅介護支援事業所のケアマネジャーへの処遇改善加算の創設を求める声も出ています。この論点については、三年前の令和3年度改定審議でも実現ギリギリまで行ったのですが、ケアプランの有料化と紐付きだったために、ケアプラン有料化が先送りされたことから自然消滅しています。今回は、紐付きでは無いため、実現の可能性は決して低くはないでしょう。しかし、その資金をどうするかという財源論も浮上しているため、慎重論も出始めているようです。
第二に、5月11日の財務省財政制度分科会において提言された、居宅介護支援事業所への同一建物減算の摘要と、訪問、通所サービスの減算の厳格化です。これも、今回の審議の重要な論点となっていくでしょう。
第三に、訪問サービスと居宅介護支援事業所へのLIFE加算の創設です。これについては、昨年と一昨年にモデル事業が実施されていますが、国の予算次第という側面もあります。訪問サービスは微妙ですが、LIFEが法定研修に位置づけられることから、居宅介護支援事業所へのLIFE加算の創設は、可能性が高いと考えます。
第四に、在宅サービスへの身体拘束廃止未実施減算の拡大です。この点については、昨年12月20日に取りまとめられた介護保険部会意見書での記載と、すでに障害福祉サービスでは訪問サービスを含めての摘要となっている事から確実でしょう。
第五に、介護報酬改定の中で取りまとめられる、12年ぶりに創設される新たな複合型サービスです。現時点に於いては、デイサービスと訪問介護の組み合わせとして議論が進んでいます。カテゴリーは地域密着型で在り、報酬体系は月額包括報酬が示されています。この想定の場合、既存の小規模多機能型、通所介護、訪問介護への影響は避けられないでしょう。これが、新たな業界再編に繋がる可能性もありますので注目せざるを得ないといえます。しかし、8月30日の審議では、反対意見が多数を占めています。決して余談を許さない状況です。ただ、厚生労働省の第9期介護事業計画案には、この新型サービスが盛り込まれているため、厚生労働省の意志は固いのではないでしょうか。
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決して楽観できない令和6年度介護報酬改定の行方
長期化したコロナ禍の影響とウクライナ情勢に端を発した物価高騰もあって、プラス改定を楽観的に予想されることが多いのではないでしょうか。しかし、コロナ禍は実質的に5月8日の5類以降で収束していますし、国は収束に向けて走っています。物価高騰も流動的な一過性の問題です。これらは介護報酬ではなく、補助金や助成金の類で対応する問題なのです。国としての政策転換の影響も大きなポイントです。国の施策の重要課題は少子化対策です。その資金3兆円の出所が決まっていないのです。その資金源泉として、当然に社会保障費用の削減も覚悟しなければならないでしょう。すなわち、令和6年度介護報酬改定は、厳冬の改定となる可能性も捨てきれないのです。今後の審議に注目して行きましょう。
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介護報酬改定の今後のスケジュール
9月後半には業界団体ヒヤリングが行われました。10月から12月にかけて二巡目の審議となります。この二巡目で多くの論点は取り纏めされるますが、一部の論点について三巡目の審議を行うことになります。そして、12月中旬には、介護給付費分科会としての意見が取りまとめられて結審となります。12月下旬に令和6年度介護報酬改定の改定率が示されます。年が明けて、2024年1月下旬、遅くても2月初旬には、令和6年度介護報酬単位が答申されます。算定要件である解釈通知とQ&Aは3月初旬となる見込です。


小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。