介護報酬審議は第二ラウンドへ。現状の大胆予想での解説 (1)

2023.11.08

 

介護報酬審議は第二ラウンドに移りました。12月中旬のとりまとめまで、残り2月を切ったことになります。それを前にして、大きな動きが出てきました。今回は、第二ラウンドを前に、現在の状況について大胆予測での解説を加えていきます。あくまでも予測であって決定した訳ではありませんのでご理解をお願い致します。

【第1回】在宅サービス審議の方向性

今回の大きなテーマが、介護報酬の簡素化です。複雑になりすぎた算定要件などを可能な限り分かりやすく、シンプルにしましょうということです。現状では、利用者も支払い内容を聞いたときに、なぜこの加算にお金を払っているのかが分かりにくいという感想をよく聞きます。また、人員基準の緩和も大きなテーマの一つです。年々縮小する労働人口にあって、ロボットやICTでは代用に効かない、人手を必須とする介護サービスに於いて、厳格すぎ、手厚すぎる人員基準は年々、重荷になっています。現在は、介護施設などの職員の三対一配置を、ICTの導入と介護助手制度によって、四対一に緩和するなどが検討されています。これらのテーマが表面化したときは、多くの介護関係者が歓迎の意思表示を行いました。 

 

そうした中で、10月23日と26日の介護給付費分科会に於いて、在宅サービスの二巡目の審議が行われました。この2つのテーマがどのように昇華しているのか、誰もが注目したのです。 

 

23日は、定期巡回サービス、小規模多機能型、看護小規模多機能型などが論点にあがりました。このなかで、3つのサービスに共通する「総合マネジメント体制強化加算」が基本報酬に包括される方向が示されました。これも、介護報酬の簡素化の一環なのですが、サービスを提供する事業者側からは、戸惑いの声が上がったのです。月に1000単位という大きな加算であることが、不安に拍車を掛けています。過去の包括化の事例では、必ずしも現行の報酬に1000単位が乗ることは無いと言っても過言ではありません。実質的に減収に繋がった事例が大部分です。さらに、この加算は区分支給限度額から除外されています。それは、この加算を算定する事で、福祉用具貸与などを併用する利用者に限度超過のリスクがあるからです。基本報酬に包括された場合、除外の特例にはなりません。限度超過のリスクが現実化することへの懸念です。 

 

26日には、通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイなどが議論されました。この中で、通所介護の個別機能訓練加算に修正が提案されました。それは、機能訓練指導員の配置基準の緩和です。区分Ⅰ(ロ)という高い報酬単位の区分では、機能訓練指導員の配置が二名体制で、かつ、一名は常勤専従で勤務時間のすべてで機能訓練指導員として配置が必要です。しかし、現実的には、勤務時間を通じて機能訓練を実施することは無いとして、機能訓練の時間帯だけの配置に緩和することが示されたのです。しかし同時に、非常勤配置で人件費が下がるという理由で、報酬単位の減額も示されたのです。これも事業所に取っては減収に繋がります。また、人員基準で非常勤となったからと言って、常勤で雇用契約した職員を非常勤として勤務時間を減らすことも出来ずに、その人件費は持ち出しとなります。 

 

その他にも、認知症加算の上位区分を設ける代わりに、現行の加算区分を減額する形が取られる。上位区分の算定要件を満たせない事業所は減収になります。新区分の報酬を、下位区分を減額する事で賄うのですから、トータルでは変わらないという手法です。この手法は、前回の令和3年度改定でも多用されました。入浴介助加算などです。しかし、上位区分の算定率が10%に満たない状況で、結局は加算の単位が減額されただけというのが実態でした。 

 

このように、介護報酬の簡素化、人員基準の緩和という名の下に、加算の基本報酬への包括化と、加算単位の減額の方向性が出たことから、令和6年度介護報酬改定が楽観出来ないことが分かりました。しかし、加算等の単位が減額となっても、最終的に基本報酬がプラスとなり、トータルで改定率がプラスとなれば問題はありません。今後の推移を見守っていきましょう。 

 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。