介護報酬審議は第二ラウンドへ。現状の大胆予想での解説。(2)

介護報酬審議は第二ラウンドに移りました。12月中旬のとりまとめまで、残り2月を切ったことになります。それを前にして、大きな動きが出てきました。今回は、第二ラウンドを前に、現在の状況について大胆予測での解説を加えていきます。あくまでも予測であって決定した訳ではありませんのでご理解をお願い致します。
【第2回】来年2月から6000円相当の処遇改善か
10月18日の朝日新聞に、政府内には月6千円引き上げる案があり、最終調整している。来年2月の実施を目指す。という記事が載りました。物価が高騰し、今年の春闘では他産業の相次ぐ賃上げで介護分野から人材が流出。深刻な労働力不足を止めるためにも、緊急の処遇改善策が必要と判断した。という事です。これは、自民党の厚生労働部会の提言を受けてのものです。この報道がされた後、6千円では不十分であるとの議論が沸き起こりました。この唐突に出された感のある処遇改善ですが、大きな疑問と問題を内包しています。それは、現在審議中の令和6年度介護報酬改定審議に於いて、3種類の処遇改善加算の一本化が進められているからです。これと、どのように整合性を取っていくのかが問題です。
そこで思い起こすのが、昨年の2月から始まった介護職員処遇改善支援補助金です。今回の6千円の賃上げも補助金の形を取る可能性が高いと思われますが如何でしょうか。その支援補助金は、令和4年11月19日に閣議決定で創設が決まっています。今回も、同様の時期に内容が確定する可能性が高いのではないでしょうか。そうなった場合、再び処遇改善計画書などの事務負担が増えるでしょう。また、昨年の支援補助金は1人当たり9000円相当とされましたが、配分する頭数が多い事業所が大部分で、平均すると職員1名当たりで4―5千円に賃上げであったことは記憶に新しいです。今回の一人あたり6千円の補助は、職員の手元に届く額としては、2―3千円となる可能性が高いと言えます。これは、月収入に算定率を掛け合わせて支給額が決定されることと、支給対象人数が人員基準以上に配置されている事業所が大部分であることの結果です。また、支給対象に介護職以外の職種も対象となるかも注目ポイントです。その後、岸田総理は、この処遇改善以外の賃上げも示唆しています。令和6年度介護報酬改定においては、一層の処遇改善が期待出来るのでは無いでしょうか。
もう一つの注目点は、処遇改善加算等で、居宅介護支援のケアマネジャーを対象に加えるか否かの部分です。令和6年度介護報酬改定審議に於いては、ケアマネジャーを対象とすべきとの機運が高まっています。東京都は、10月10日に国への緊急提言を行って、ケアマネジャーへの処遇改善を求めています。ケアマネジャーを対象とする処遇改善加算は、前回の令和3年度介護報酬改定審議に於いても論点にあがっています。その時は、実現ギリギリまで行ったのですが、ケアプランの有料化と紐付きだったことから、土壇場で見送られた経緯があります。その代わりに導入されたのが、基本報酬区分Ⅰの利用者数を39人から5人増やして44人とする、逓減制の緩和措置です。ケアマネジャーの担当件数を増やして収入を挙げていき、給与に反映させる意味が含まれていましたが、現在の算定率は10%に届かずに全く機能していないことが問題となっています。
ケアマネジャーは介護保険制度においては、そのコアな部分を担う制度の最重要なポジションです。それが、資格試験の受験者も減少して、一時期は3万人の合格者を誇ったケアマネ試験の合格者数が、今や十分の一程度となっている現状があります。これは、介護職員が処遇改善加算等で年々、給与がアップするなかで、ケアマネジャーの給与が余り上がらすに、ケアマネジャーという職種の魅力が大きく減少していることも要因の一つです。この意味で、ケアマネジャーへの処遇改善加算の対象拡大は必然と言えます。いずれにしても、これらの新たな処遇改善の行方は、注目すべきポイントです。

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。