介護報酬審議は第二ラウンドへ。現状の大胆予想での解説。(3)

2023.11.22

【第3回】介護報酬改定の施行時期を6月に

診療報酬はすでに6月施行へ 

業界団体がそれぞれ5―10分程度のスピーチを行う業界団体ヒヤリングというイベントが終了しました。そして、第二ラウンドの介護報酬改定審議に入らんとする10月11日。第227回社会保障審議会介護給付費分科会の議題に、介護報酬改定の施行時期が盛り込まれたのです。 

その趣旨は、診療報酬については、診療報酬改定DXの推進に向け、令和6年度以降における医療機関・薬局等やベンダの集中的な業務負荷を平準化するため、令和6年度診療報酬改定より施行時期を6月1日施行(薬価改定の施行は4月1日)とすることについて、中医協において了解されている。介護報酬についても、診療報酬同様に施行時期を6月1日施行することが提案されたのです。 

診療報酬、介護報酬改定のいずれにおいても、これまでは、 1月から3月に報酬単位の答申と通知やQ&Aが矢継ぎ早に出されて、職員は3月の短期間で新たな報酬算定についての準備をしなければなりませんでした。また、診療報酬と介護報酬の施行時期が異なる事態となれば、訪問看護や居宅療養管理指導など、診療報酬・介護報酬の両方を請求している事業所が一定数あることから混乱が生じることが懸念されたのです。 

 

当日の審議は賛否両論となった 

当日の審議に於いては、賛否の意見が分かれました。主に医療系の委員は賛成を表明し、福祉系の委員は反対の立場であったとのことです。反対意見の主な理由は、介護報酬単位や処遇改善加算の引き上げが見込まれる中で、施行が2月遅れることは、事業所の収益の確保が遅れるというのが主な意見です。しかし、2月遅れるとしても、その後の36ヶ月に於いて報酬は確実に獲得出来るのであるから大きな問題とは言えないでしょう。そもそも、令和6年度介護報酬改定に於いて、プラス改定を前提した意見ですが、現時点に於いてプラス改定となる事は何も示されていないのです。

当日の厚生労働省の資料に以下の記述があります。「次期介護報酬改定においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行うことを目指している。また、介護職員の処遇改善に係る加算を含め、事務の変更が見込まれている。」この前半の文言は、6月16日に閣議決定した骨太の方針2003を周到しています。必要な対応を行うとは記されていますが、一言も引き上げるとか、改善するという言葉が含まれていないのです。また、現内閣の重要政策である「異次元の少子化対策」での3.5兆円の財源確保には、社会保障費用の抑制が不可欠とも言われています。すなわち、今後の財政予算の動向に令和6年度介護報酬改定が委ねられているのです。そして、その結論はまだ何も出ていません。また、介護職員処遇改善3加算の一本化と加算率の引き上げ。さらには居宅介護支援事業所への処遇改善加算創設の可能性がある中で、その増額部分もプラスの改定率に含まれることになります。そのため、実質的にマイナス改定の可能性も高いと言えます。 

 

③6月施行は歓迎すべきである 

いずれにしても、施行時期が6月になる可能性はかなりの確率で高いとみています。施行時期が6月になった場合にも、審議や報酬単位の答申のスケジュールは従前通りに行われます。Q&Aなどに若干の遅れはあるでしょうが、事業所にとっても、余裕のあるスケジュールは歓迎すべき点も多いと考えます。新たな加算算定についても熟考出来るでしょう。処遇改善加算の見直しがあった場合、職員への配分の見直し作業や処遇改善計画書の作成にも時間を要するのです。施行時期を6月とすることは歓迎すべきです。

 

第227回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料 
【資料3】介護報酬改定の施行時期について[2.4MB]

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。