介護報酬審議は第二ラウンドへ。現状の大胆予想での解説(4)

2023.11.29

【第4回】介護報酬は上がるのか。外国人研修生の緩和は?

①介護報酬改定に物価高は、ほとんど反映されない可能性 

 業界団体ヒヤリングにおいて、大部分の関係団体が介護報酬のアップを要求し、それが必然である意見が高まっています。しかし、敢えて介護報酬改定に物価高は、ほとんど反映されないと予想します。それは、6000円相当の処遇改善の実施を提言した自民党の厚生労働部会の重点事項の中身です。この中で、医療・介護・障害福祉等分野に於ける物価高騰への対応等という提言があります。賃上げのための必要な対応を早急に実施すること。と共に、食材料費、光熱水費高騰への必要な対応と実施。特に、入院時の食費の基準についての見直しに向けて早急かつ確実な支援を行うとしています。また、ICT化や職場環境改善の支援、人材関連への支援などを行うと記しています。すべてにおいて、支援と言う言葉を使っています。すなわち、物価高騰対策は、補助金・助成金の類での対応であることが推測され、介護報酬への反映は最低限でのものである可能性が高まっています。そもそも、物価は一過性の問題であり、今の状況が永続するものではありません。一時期、卵の値段が300円を超えた時期が続きました。あれは、鳥インフルエンザが原因で、WHOが終息宣言を行った今、卵の値段は徐々に下がりつつあります。現状を根拠に、来年4月から介護報酬を引き上げた場合、物価が安定した場合であっても3年間は介護報酬を引き下げることが出来ません。介護事業に多大な影響を与えたコロナ禍の3年弱においても、介護報酬に反映されたのは、令和3年4月からの半年だけでした。それ以外は、掛かり増し経費などの補助金、助成金の類で対応したことからも明らかと言えます。よって、介護報酬改定に物価高が反映される可能性は低いと考えます。 

 そもそも、現政権が掲げる重点施策「異次元の少子化対策」費用3.5兆円の資金財源が未だに確定しません。この捻出に社会保障費用を充てるという憶測も強くあります。防衛費倍増の資金も同様です。介護報酬でおける自己負担2割の対象者の拡大も、介護報酬の枠組みに大きな影響を与えるでしょう。いずれにしても、令和6年度介護報酬改定については、大きなプラス改定となる要素が、実は少ないことに気づきます。そのため、現実的には、3回連続で1%に届かないプラス改定を予想しています。また、介護職員処遇改善3加算の一本化と加算率の引き上げ。さらには居宅介護支援事業所への処遇改善加算創設の可能性がある中で、その増額部分もプラスの改定率に含まれます。そのため、実質的にマイナス改定の可能性も高いでしょう。 

 

外国人研修生の訪問介護への適用議論について 

 訪問介護は、有効求人倍率が15.5倍となり、介護職員の確保策が重大な課題となっています。外国人研修生の活用を認める等の対策が焦点となってくるのは明らかです。その「外国人材の業務の在り方に関する検討会」での審議の中で、訪問介護に外国人研修生の配置を認めるか否かの検討も進められています。多くの意見は、時期尚早として反対に傾いています。その理由が、外国人を密室状態でのサービス提供となる訪問介護に認めた場合、事件事故が起こった場合、誰が責任を取るのかという意見です。しかし、これは、明らかに外国人への偏見であり、差別です。今、多くの事件や事故を起こしているのは日本人です。その折衷案として、まずは有る程度の視野の効く高齢者住宅に限定して認めて、その状況によって一般住宅への適用を検討するという意見があります。これは現実的と言えます。高齢者住宅は、完全な密室とはなりません。そこで、しっかりと外国人研修生の優秀さを見極めて頂き、早急に訪問介護への適用を実現すべきです。また、技能実習生については、就労時点から介護職員としての配置を認めるか否かの議論も進められています。今回の改正で、外国人への門徒が大きく開く可能性が高まっています。しかし、逆風も吹き出しているのです。それは、慢性的な円安です。アジア系の外国人にとっての日本の優位性が失われてきているのです。変革を躊躇っている内に、時代は常に大きく変わり続けていることを認識すべきでしょう。 

 

第1回外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 資料 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。