令和6年度介護報酬改定審議の動向 (1)

2023.12.06

 

令和6年度の介護報酬改定審議は最終ラウンドに移りました。12月のとりまとめまでラストスパートの段階です。今回の改定審議の大きなテーマが、介護報酬の簡素化と指定基準の緩和であり、複雑になりすぎた算定要件などを可能な限り分かりやすく、シンプルにする方向が出されています。また、メリハリのある改定もキーワードとなっています。単に新たな加算を創設したり、介護報酬単位を引き上げるのでは無く、重要な項目を引き上げるとともに、重要性の薄くなった項目を引き下げることでバランスを取るという意味です。このため、収入が増える事業所がある反面、収入の減る事業所も同時に存在し、二極化が進む可能性が高まっています。 

訪問介護、訪問看護、居宅介護支援のポイント 

 

訪問介護においては、特定事業所加算の重度者要件に看取り期の者を加えることが示されています。また現在、5区分ある特定事業所加算区分を減らす事が示されました。さらに、同一建物減算の強化が打ち出されていて、同一建物に居住する利用者の割合などに応じて、段階的な減算を行うとしています。これによって、一定の高齢者住宅の利用者にのみサービスを提供している場合は、一層の減算率となり、収益が減少することとなります。該当する事業所は、収入の減少の可能性があります。 

訪問看護では、専門性の高い看護師が、訪問看護の計画的な管理を行うことを評価する専門管理加算を創設する方向です。緊急時訪問看護では、看護師等以外の職員も利用者家族からの電話に対応出来るとの緩和措置を設けて、看護師等の負担を軽減する方向です。また、同加算に24時間体制への取組を一層に評価する区分を設けるとしました。さらに、理学療法士等による訪問看護の規制強化の方向は変わらない状況で、更なる対応が懸念されています。 

 

居宅介護支援事業所は、今回最大の改定となっていく方向が打ち出されました。入院時情報連携加算の要件を、3日以内と7日以内の情報提供から、当日と3日以内に大きく短縮することで情報提供のスピードを求めています。通院時情報連携加算の対象に、歯科医師を追加することで算定の幅を拡げました。ターミナルケアマネジメント加算では、対象となる疾患を限定しないことで算定要件を緩和する方向です。前回の介護報酬改定で義務化された、前6か月間に作成したケアプランにおける訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合などの利用者に対する説明義務を努力義務に改める方向です。これによって、運営基準減算の対象から外れる事になり、ケアマネジャーの心理的な負担が軽減されます。同様に、特定事業所加算が算定出来ないとされる要件の一つである運営基準減算の適用事業所を、算定出来ない要件から外すことで更にケアマネジャーの負担を軽減します。

また、毎月のモニタリング訪問について、利用者の同意を得てZOOMなどを活用する場合は、居宅訪問は2月に一回に緩和される方向です。居宅介護支援最大の変更点で問題は、逓減制の緩和でしょう。基本報酬区分Ⅰの担当件数を、制限を無くして44件までとします。また、ケアプランデータ連係システムを活用している場合は、49件までに緩和されます。同様に、予防ケアプランのカウントを、従来の二分の一から三分の一に緩和します。この措置によって、居宅介護支援への処遇改善加算の適用は見送られることになりました。そのため、担当件数を増やして給与を上げることを求めているとの解釈も出来るため、業務負担とケアの質の担保が問題視されることとなりました。さらに、居宅介護支援事業所への同一建物減算の適用も示されて、該当する事業所の収入ダウンが懸念されています。同一建物減算の適用は、財務省が強く求めていた要件で、居宅介護支援事業所に激震が走った形と言えます。 

 

第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。