令和6年度介護報酬改定審議の動向 (3)

令和6年度の介護報酬改定審議は最終ラウンドに移りました。12月のとりまとめまでラストスパートの段階です。今回の改定審議の大きなテーマが、介護報酬の簡素化と指定基準の緩和であり、複雑になりすぎた算定要件などを可能な限り分かりやすく、シンプルにする方向が出されています。また、メリハリのある改定もキーワードとなっています。単に新たな加算を創設したり、介護報酬単位を引き上げるのでは無く、重要な項目を引き上げるとともに、重要性の薄くなった項目を引き下げることでバランスを取るという意味です。このため、収入が増える事業所がある反面、収入の減る事業所も同時に存在し、二極化が進む可能性が高まっています。
通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイのポイント/来年2月からの6千円の処遇改善と処遇改善3加算の一本化
1.通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイのポイント
通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイなどの審議の中で、通所介護の個別機能訓練加算に修正が提案されています。その内容は、機能訓練指導員の人員配置基準の緩和です。同加算の区分Ⅰ(ロ)では、機能訓練指導員の配置が二名体制であり、かつ、一名は常勤専従で勤務時間のすべてで機能訓練指導員として配置が求められています。しかし、現実的には、勤務時間を通じて機能訓練を実施することは少ないとの判断で、2名の機能訓練指導員共に、機能訓練の時間帯だけの配置に緩和することが示されました。しかし同時に、非常勤配置によって勤務時間が減少して人件費が下がるという理由で、報酬単位の減額も示されたのです。この改定も通所介護事業所にとっては減収となります。また、人員基準で非常勤となったからと言って、常勤で雇用契約した職員を非常勤として勤務時間を減らすことも出来ません。その人件費は、事業所側の持ち出しとなります。
通所リハビリテーションでは、入院先の病院から退院後、速やかな利用に結びつけるための施策が多く盛り込まれました。サービス利用に当たって、意見を求める医師に、入院先の医師が追加となりました。リハビリテーション計画の作成に当たって、入院先のリハビリテーション計画書を受け取って計画書を作成するなど、サービス利用までの時間のスピードアップの為の対応が盛り込まれています。また、大規模減算の縮小が打ち出されました。基本報酬に於ける区分で、大規模Ⅰ―Ⅱと通常規模の格差が縮められる方向がしめされました。これによって報酬面での大規模化の不利を払拭して、大規模化を推進する方向が明らかになっています。しかし同時に、通常規模の報酬が引下げられることの懸念があります。
通所介護、通所リハビリテーション共通の入浴介助加算区分1の算定要件に、入浴技術研修の実施が加わる方向です。これは、前回の報酬改定で下げすぎた加算単位の引き上げが目的と思われます。引き上げるための方便が研修の手間への評価なのです。従前の50単位に戻ることはないでしょうが、3〜5単位のアップは期待出来ると言えます。また、入浴介助加算区分2においては、利用者の居宅訪問において、介護職員の訪問を認める方向が示されました。しかし、これはあくまでもカメラマン的な位置づけでの訪問です。居宅の浴室の状況をビデオやTV電話で事業所の医師等(療法士、介護福祉士等)に伝えて、医師等が評価する形です。介護職員の評価は認められません。この措置で、どこまで区分Ⅱの算定率が上がるかが注目されます。また、積雪や大雨などによって道路が渋滞するなどして送迎が遅れ、結果としてサービス提供時間が計画より短くなった場合も、やむを得ない理由として当初の計画時間での請求を認めることが示されました。
ショートステイでは、看取り介護加算が創設されます。また、長期滞在者の基本報酬を特養並に引き下げる事も示されています。
2.来年2月からの6千円の処遇改善と処遇改善3加算の一本化
11月29日に補正予算が成立したことで、月6千円相当の処遇改善は来年2月から実施されます。その実施方法は、現在のベースアップ等支援加算への上乗せという形となります。この措置は4ヶ月限定となります。その理由は、現在の処遇改善3加算が廃止となり、新たな処遇改善加算が創設されるからです。この場合、現在の加算金額を下回ることはないとされています。また、ベースアップ等支援加算の要件である、加算総額の三分の二以上を月給ベースで支給する要件も、その配分率を見直して継続の方向となっています。報酬区分は4区分程度になりそうです。現在の3加算も経過措置として、1年程度は同時並行で算定継続が可能となる見込です。また、職場環境要件の内容は見直しとなる方向です。
第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。