令和6年度介護報酬改定審議の動向 (4)

2023.12.27

 

令和6年度の介護報酬改定審議は最終ラウンドに移りました。12月のとりまとめまでラストスパートの段階です。今回の改定審議の大きなテーマが、介護報酬の簡素化と指定基準の緩和であり、複雑になりすぎた算定要件などを可能な限り分かりやすく、シンプルにする方向が出されています。また、メリハリのある改定もキーワードとなっています。単に新たな加算を創設したり、介護報酬単位を引き上げるのでは無く、重要な項目を引き上げるとともに、重要性の薄くなった項目を引き下げることでバランスを取るという意味です。このため、収入が増える事業所がある反面、収入の減る事業所も同時に存在し、二極化が進む可能性が高まっています。 

 

介護老人保健施設

1.在宅復帰・在宅療養支援機能の強化  

老健の基本報酬は、その他型から超強化型までの5段階です。その階段は、在宅復帰・在宅療養支援指標の点数の積み上げで決定されます。この指標の中で、入所前後訪問指導割合及び退所前後訪問指導割合に係る指標の取得状況を踏まえて、基準を引き上げる方向が示されました。また、支援相談員の配置割合に係る指標においては、社会福祉士の配置を評価するとされました。老健の支援相談員の資格基準は実務経験程度です。この部分において、社会福祉士資格を求めると言うことは、かなりの意識改革と言えます。 

 また、各類型間における基本報酬において、更に評価の差をつけるとされたことから、下位区分のその他型から基本型の基本報酬が引き下げられて、上位区分の強化型、超強化型の基本報酬が引き上げられる可能性が高まりました。特養化した長期滞在型の老健にとっては、多床室料の自己負担化と合わせてダブルパンチとなり、経営の存続が危ぶまれる事態を想定しなければならない可能性が浮上しています。 

 

  1. 加算関係の見直し 

 リハビリテーションマネジメント計画書情報加算において、リハビリテーション・口腔・栄養を一体的に推進する観点からの新たな加算区分を新設する方向です。 

 短期集中リハビリテーション実施加算については、原則として入所時及び月1回以上の頻度で、ADL等の評価を行った上で、必要に応じてリハビリテーション計画を見直すとともに、その評価結果をLIFEに提出した場合の加算区分を新設します。さらに、従来の区分の報酬単位を引き下げる方向です。 

 認知症短期集中リハビリテーション実施加算については、認知症を有する利用者の居宅を訪問して、生活環境を把握することを要件とします。利用者の居宅を訪問しない場合については、報酬単位を引き下げる方向です。 

 ターミナルケア加算については、死亡日から期間が離れた区分における評価を引き下げて、死亡直前における評価を引き上げることで、安易に病院に移さず、最後まで老健で看取ることを求める方向です。 

 かかりつけ医連携薬剤調整加算()について、現在の算定要件である入所前の主治医と連携して薬剤を評価・調整した場合に加えて、施設において薬剤を評価・調整した場合に報酬を引き上げる方向です。 

 退所時情報提供加算は、入所者が医療機関へ退所した場合で、生活支援上の留意点等の情報を提供した場合についても新たに評価します。 

 地域連携診療計画情報提供加算及び認知症情報提供加算については、算定率が著しく低いことを踏まえて、廃止の方向である。 

 

介護老人福祉施設 

1.緊急時等の対応方針の見直し 

 配置医師の対応が困難な場合の緊急対応においては、施設・配置医師・協力病院の3者でその役割分担等を協議して、緊急時等対応マニュアルに反映することが示されました。その上で、配置医師・協力病院の協力を得て、定期的な見直し(1年に1回程度)を行うことを施設に義務づける方向です。 

 

  1. 配置医師緊急時対応加算 

 配置医師緊急時対応加算については、配置医師が、日中であっても、通常の勤務時間外に急変等に対応するために駆けつけ対応を行った場合に報酬を引き上げる方向です。 

 

  1. 透析が必要な入所者の送迎・付き添いの評価 

 透析が必要な入所者の送迎・付き添いでは、定期的かつ継続的な透析を必要とする入所者で、家族や病院等による送迎が困難である等やむを得ない事由がある入所者の場合で、施設職員が月一定回数以上の送迎を行った場合については新たな加算などを創設する方向です。 

 

 

介護施設共通

 特養・老健・介護医療院においては、1年間の経過措置を設けた上で、以下の要件を満たす協力医療機関を定めることを義務化されます。 

 

①入所者の急変時等に、医師又は看護職員が夜間休日を含め相談対応する体制が確保されていること。

②診療の求めを受け、夜間休日を含め診療が可能な体制を確保していること。

③当該施設での療養を行う患者が緊急時に原則入院できる体制を確保していること。 

 

特定施設と認知症グループホームについては、上記の①と②について努力義務とします。また、定期的(年1回以上)に、協力医療機関と緊急時の対応等を確認して、医療機関名等について指定権者(許可権者)に提出することを義務とする方向です。 

 

特養、特定施設、認知症グループホームについては、医療機関へ退所した場合の情報提供にかかる加算を創設する方向です。 

  

第231回社会保障審議会介護給付費分科会資料 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。