審議が終了した介護報酬改定の注目ポイント(2)

第2回:異なる施行時期の混乱と新型サービスは見送り
今回の介護報酬改定の施行時期は介護サービスによって異なります。訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4つのサービスは6月1日の施行となります。それ以外の介護サービスは、従来通りに4月1日から施行されます。
現行の3つの処遇改善加算は、新たに介護職員等処遇改善加算として一本化されます。その施行時期は6月1日となるので注意が必要です。2月からスタートする一人6000円相当の処遇改善は、支援補助金として5月まで算定です。よって、職員額の支給金額の見直しと、3分の2以上を月給で支給する算定要件を満たすための見直しが必要です。また、新たに計画書と実績報告書の提出が求められます。そして、6月以降は新加算に組み込まれることになります。ただし新加算については、1年間は旧加算の算定も可能とする特例措置があります。これは、対象人数が多かったり、賃金規定の見直しなどで時間を要する場合を想定しての特例です。一般の事業者は、新加算の算定で確実に事務負担が減少します。迷わずに新加算を算定すべきです。
令和6年4月(一部6月)より、BCP作成と高齢者虐待防止措置への未対応事業所には減算が適用されます。BCP減算には特例措置があります。基本的には令和7年4月から減算となりますが、虐待防止措置は来年4月から適用されます。注意すべき点は、BCPの義務化は令和6年4月であることには変わりはないという事です。減算とならなくても、運営指導で運営基準違反として指導対象となります。やはり、BCPの作成と高齢者虐待防止措置は年度内に完了しておくことが必要なのです。この2つの課題についても、小規模事業所ほど、対応が遅れているようです。
今回の介護報酬改定は、4月スタートのものと、6月スタートのものが混在します。現場レベルでの混乱が懸念されます。また、各サービスの改定項目が非常に多いため、チェックリストなどを作成して、対応の漏れがないようにする対策が必要です。
そのような中で、今回の改定の目玉であったデイサービスと訪問介護の新型複合型サービスは創設が見送られました。この新型サービスは、昨年の介護保険部会で創設が示され、5月12日に通常国会で成立した令和6年度介護保険法にも位置づけられたものです。第九期介護保険事業計画(案)にも、その方向が示されていました。11月6日の介護給付費分科会において、その指定基準や介護報酬の方向が提案されていたのですから、急転直下の見送りは驚きでした。審議会では、見切り発車という批判が多く聞かれました。コロナ禍の影響でモデル事業が全く実施されて居らず、新型サービスの検証が行われていない事への批判です。実際に新型サービスについては、厚生労働省老人保健健康増進等事業として三菱総合研究所が実施した調査報告程度しか検証が行われていませんでした。今後の3年間で、しっかりとした検証を行った上で、満を持して3年後の改定で仕切り直すという判断は歓迎すべきでしょう。そもそも、地方におけるホームヘルパー不足に対応するための新型サービスの人員基準に於いて、訪問介護同様の資格を求めた時点で、今回提案された新型サービスは破綻していたと思います。しかし、全国の社会福祉協議会が運営する訪問介護事業所が、過去5年間で220箇所が廃止や休業になっている中で、訪問サービスを受けることが出来ない地域が年々拡大しているという現実もあります。社会福祉協議会が運営する訪問介護が最後の砦である地域も多いのです。今後、3年間の中で、介護サービスの地域間格差を是正できる制度の構築は待った無しです。3年という時を待たずに臨時改正と言う手段を執ってでも、早急に代替案を纏めるべきではないでしょうか。

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。