審議が終了した介護報酬改定の注目ポイント(4)

2024.01.31

第4回:デイケアの大規模減算の見直しと共生型創設の意味

通所リハビリテーションでは、大規模減算の縮小が打ち出されました。基本報酬に於ける区分で、大規模Ⅰとが統合されて通常規模との2区分の報酬体系となります。さらには、リハビリテーションマネジメント加算の算定率とリハ職の配置次第では、大規模事業所でも通常規模の報酬を算定出来ることは画期的です。これによって報酬面での大規模化の不利を払拭して、大規模化を推進する方向が明らかになったのです。 

 

令和6年度は6年に一度の、介護報酬、障害福祉報酬、診療報酬のトリプル改定です。障害福祉サービスの審議結果において、通所リハビリテーションの共生型自立訓練の創設が決まりました。障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する支援ニーズへの対応として、障害者へのリハビリテーションの提供が求められています。これまでの障害福祉サービスはレスパイト目的が中心であり、リハビリテーションによる社会参加、自立支援という観点は余りありませんでした。通所リハビリテーションでの共生型自立訓練の実施は、その起爆剤になるかも知れません。療法士の方々に、この話をするとても興味を持ってくれます。障害者へのリハビリテーションは、フロンティアであり、大きな可能性を感じての事です。この分野には、リハビリテーションにおけるビッグチャンスが潜んでいるという期待感です。 

 

しかし問題は、2018年度改定に介護保険において共生型サービスが創設されて以来、いまだに普及が進まないことです。その理由の多くが、職員が障害者のケアについて不安に感じたり、利用者が障害者と同じスペースにいることを好まないという先入観です。実際には、デイサービスで共生型生活介護を併設している事業所は、業績は尻上がりで好調です。あるデイサービスは、共生型の許認可を得て、障害者に機能訓練を提供しています。夜によく眠れる、気持ちが落ち着くなど、概ね好評です。体調も改善されて、就労支援に移行した利用者もいます。親が要介護認定者、子供が障害者の親子は、一緒にデイサービスに通っています。 

 

これまで、障害福祉サービスにおける自立訓練は、利用者数及び事業所数共に低位のまま推移していました。事業所が1か所もない都道府県もあります。すでに介護保険のデイサービスや小規模多機能型において、共生型自立訓練(機能訓練)が可能となっていますが、入浴・排せつ・食事等の介護の提供が中心となるこれらのサービスでは障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する支援ニーズに十分応えられていないとの議論が行われました。そこで白羽の矢が立ったのは、これまで共生型が設けられていない通所リハビリテーションでした。 

 

令和6年度改定では、障害福祉においても過去最大規模の激変となっています。障害グループホームに一人暮らしへの支援を求め、就労支援では次なるステップとして、一般就労への移行支援を明確にしています。今後の障害福祉制度は、一般就労への移行や一人暮らしの支援といった自立に方向が向いていくでしょう。単なるレスパイトから自立支援に大きく舵を取りつつあります。コロナ禍が明けて、人々の価値観やニーズが大きく変わりました。一般でも安価で気軽にエクササイズを24時間利用出来るサービスが急成長しています。レスパイト中心のデイサービスが稼働率を落とし、リハビリ型デイサービスが各地で不足しています。もはや、リハビリテーションや機能訓練は介護サービスに於いては必須になっています。介護保険より長い歴史を持ち、制度として熟成した感のあった障害福祉が、自立支援へ大きく変貌する方向が見えてきた今、時代は、大きく変わろうとしているのです。 

 

社会保障審議会介護給付費分科会(第229回) 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。