令和6年度介護報酬改定の答申の要点(1)

1,実質的な改定率は0.61%のプラス
1月22日、令和6年度介護報酬が答申されました。しかし、今回の介護報酬改定は、すべての介護サービスがプラス改定となった訳ではありません。訪問介護は、何と2%以上の基本報酬のマイナスでした。訪問介護は介護職員だけで構成されるため、介護職員等処遇改善加算も、すべてが介護職員の賃上げにまわります。しかし、居宅介護支援や訪問看護には処遇改善加算は存在しません。そのため、基本報酬を引き上げて、処遇改善に充てるという考えが国から示されています。そのようなプラスムードの中で、同一建物減算が居宅介護支援に創設され、訪問介護では強化されました。
令和6年度介護報酬改定率は、現実的には0.61%のプラスに留まりました。この数字は、前回の0.7%を下回ります。近年の物価上昇を考えると、実質的にマイナス改定です。公表された改定率1.57%には、0.98%の処遇改善部分が含まれています。2月から実施される6,000円相当の処遇改善は介護職員支援補助金として5月まで実施され、6月より令和6年度の報酬アップ分として、新たに一本化される介護職員等処遇改善加算に組み込まれます。所謂、数字のマジックである。問題は、その事務負担です。6月からの介護職員等処遇改善加算の算定準備を含めると、事務方の負担が同時期に集中します。また、6,000円相当の処遇改善は2%程度の賃上げに相当するとされています。この数字も、日経新聞の賃金動向調査による賃上げ率3.89%に遠く及びません。いずれにしても、介護事業の経営者は、介護報酬に頼る事無く、自社努力による経営改善が強く求められる結果となったのです。
2,令和3年度介護報酬改定の経過措置の終了による減算
令和6年4月より、BCP作成と高齢者虐待防止措置への未対応事業所には減算が適用されます。BCPは特例措置があり、基本的には令和7年4月から減算となりますが、虐待防止措置は来年4月から適用されます。業務継続計画未策定減算は、施設系は3%、その他のサービスは1%です。高齢者虐待防止措置未実施減算も1%です。注意すべきは、BCPの義務化は令和6年4月であることには変わりはないという事です。減算とならなくても、運営指導で運営基準違反として指導対象となります。やはり、BCPの作成と高齢者虐待防止措置は年度内に完了しておくことが必要です。また、業務継続計画未策定減算の算定要件に、当該業務継続計画に伴い必要な措置を講ずること。が示されています。BCPの未策定だけでは無く、研修、訓練、見直しの未実施も減算の対象と成るということです。高齢者虐待防止措置未実施減算は、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、専任の担当者の設置の4つを実施して居ない場合に減算となります。これらは、前回の令和3年度介護報酬改定の宿題です。そろそろ、宿題を仕上げないと新学期が始まりますと言うことです。宿題はこれだけではありません。感染対策として、感染症対策委員会の開催、指針の整備、研修と訓練が4月から義務化されます。また、医療福祉の資格を持たない介護職員を配置している場合は、今年の3月までに認知症基礎研修の受講が義務化されています。4月以降に新たに介護職員として配置され、資格を持たない職員は配置日から1年以内の受講が必要です。また介護施設は、栄養マネジメント加算と口腔衛生管理体制加算のまるめによる経過措置が終了し、栄養マネジメント加算の要件を満たしていない場合は14単位の減算となります。
出典:介護最新情報 vol:1174
https://www.mhlw.go.jp/content/001153087.pdf

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。