令和6年度介護報酬改定の答申の要点(3 

2024.02.21

1,通所サービス 

デイサービスは、0.44%、地域密着型通所介護は、0.38%のプラスとなりました。デイケアは、通常型は0.7%ですが、現行の大規模Ⅰは、大規模型の統合の影響で、-2.8%となっています。デイケアでは、基本報酬の大規模ⅠとⅡが統合されて、大規模型となりました。また、大規模型であっても、リハビリテーションマネジメント加算を全体の80%以上算定して、リハ職を10:1の割合で配置した場合には、通常型の報酬を算定出来ることとなります。 

 

デイサービスでは、入浴介助加算Ⅰの算定要件に、入浴介助担当者への入浴技術研修が義務化されました。研修自体は、厚生労働省がビデオ講座と解説書を提供しているので、それを活用すれば足ります。しかし、この要件はデイケアには設けられていません。また、入浴介助加算Ⅱについては、デイサービス、デイケアともに、介護職員がカメラマン的な立ち位置で居宅訪問が可能となっています。ただし、あくまでもビデオやZOOM中継のカメラマンであって、評価やアドバイスは医師等が行うことに注意すべきです。 

 

デイケアでは、入院中の利用者が退院後に速やかにサービスが開始出来るための措置が多く盛り込まれました。入院中に医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書を入手することが義務化さ、理学療法士等が、医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する退院後共同指導加算が創設されました。 

 

デイサービスの個別機能訓練加算Ⅰ(ロ)の算定要件である機能訓練指導2名配置中、1名が常勤専従である旨の要件が廃止となます。これで、2名共に機能訓練の時間帯に配置する非常勤配置が可能となりました。同時に、非常勤化で人件費が減少するとして、加算単位が減額されたのは痛手と言えます。 

 

デイケアでは、リハビリテーションマネジメント加算に、口腔アセスメント及び栄養アセスメントとLIFE活用を行った場合の新区分(ハ)が創設されました。また、通所系サービスに於ける送迎では、共同送迎が認められています。 

出典:自社作成

 

2,施設系サービス

特別養護老人ホームは、2.8%のプラスとなりました。しかし、介護老人保健施設では、報酬区分によって明暗が大きく分かれています。「在宅強化型」が4.2%のプラスであるのに対して、「その他型」が0.86%、「基本型」が0.85%と大きく差が開いたのです。加算型も、基本型の報酬に加算を加えたものであるので同様の結果です。介護事業経営実態調査結果では、特別養護老人ホームは、-1.0%、介護老人保健施設が-1.1%であったことを考えると1%に届かない改定率は非常に厳しいと言えます。特に、「その他型」は令和7年8月から多床室料が自己負担となります。利用者負担が月額で8,000円程度増額となって、稼働率の低下が懸念されています。もともと、その他型、基本型は、長期滞在型の老健で病院と居宅の中間施設という役割を果たしていないという評価がありました。今回の結果を踏まえて、長期滞在型老健の経営モデルは破綻したと考えるべきでしょう。今後は中長期ビジョンの中で、強化型、超強化型への転換を早急に検討すべきです。 

 

また、介護老人保健施設の基本報酬ランクを決める評価指標のハードルが上げられました。入所前後訪問指導割合、退所前後訪問指導割合の指標が引き上げられ、支援相談員に社会福祉士の配置が無い場合は、点数が減額されますこれによって、さらに上位区分の基本報酬算定が難しくなりました。要は、介護老人保健施設は現状で満足せずに、さらにレベルアップが求められます。 

 

介護施設系には特に、新興感染症対策が多く盛り込まれました。新興感染症とは、コロナに続く新たなウィルスのことです。コロナ禍の教訓を踏まえて、次に襲来する未知のウィルスへの準備を進めます。また、入所者の体調急変に備えて、緊急時対応の準備や、24時間体制で相談、診察、入院の出来る医療機関との協力体制の義務化などが強化されました。特別養護老人ホームの配置医師緊急時対応加算では、夜間、深夜、早朝に加えて、日中であっても、配置医師が通常の勤務時間外に駆けつけ対応を行った場合の区分も創設されています。 

 

特別養護老人ホームでは、社会問題化しつつある透析患者が施設に入所出来ない問題の解決として、施設職員による透析患者の病院への送迎を評価する特別通院送迎加算が創設されました。 

 

介護老人保健施設の認知症短期集中リハビリテーション実施加算では、入所者の居宅を訪問し生活環境を把握する区分が設けられました。短期集中リハビリテーション実施加算では、入所時及び月1回以上 ADL 等の評価を行うことなどを要件とする上位区分が設けられていますた、ターミナルケア加算では、死亡日の前日及び前々日並びに死亡日を高く評価する変更が行われました。要は、老健も最後まで施設で看取り対応を求めるという事です。

 

出典:自社作成

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。