令和6年度介護報酬改定の答申の要点(4)

1,同一建物減算の拡大
多くの介護サービスが、僅かでもプラス改定ムードが漂う中で、同一建物減算が居宅介護支援に創設されました。所定単位の5%が減算されます。その要件は、居宅介護支援事業所と同一建物、同一敷地内の建物に居住する利用者は1名から減算となり、異なる建物の場合は1月辺りの利用者数が20人以上の建物に居住する利用者が減算の対象となります。同一建物減算のロジックは、一般住宅に居住する利用者のモニタリング訪問には、移動時間や交通経費が発生します。事業所と同一の建物の居住者には、それらの時間や経費は発生しません。大人数の利用者が同一建物に居住する場合は、移動は建物の上下の移動で事足ります。それで節約される相当経費分の報酬を減額するという考え方は、訪問介護などと同じです。そのため、居宅介護支援事業所がいつ対象となっても不思議では無かったのです。
2,LIFEの提出頻度を3ケ月に1回に統一
LIFE関連の加算算定要件では、これまでLIFEに情報提供する頻度が6ヶ月の加算と、3ケ月の加算が存在しました。今回の改定で、すべての加算の提出頻度が少なくても3ケ月に1回に統一となります。自立支援促進加算でも、医師の医学的アセスメントを少なくとも「6月に1回」から「3月に1回」の実施に見直されました。訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算に新たな区分が創設されて、LIFEの活用が算定要件となっています。介護保険施設のリハビリテーションマネジメント計画書情報加算、介護老人福祉施設等における個別機能訓練加算(Ⅱ)についてもLIFEの活用が算定要件となりました。介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーションでは、12 月が経過した後の減算について定期的なリハビリテーション会議などとともに、LIFEを活用していた場合に減算を免除するという特例が盛り込まれました。介護老人保健施設の短期集中リハビリテーション実施加算もLIFEの活用を含む取り組みを行っている場合の新区分が設けられています。今回の改定では、訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算の適用は見送られたましたが、広範囲にLIFE関連の加算が拡大しているといえます。訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算の創設は、次回令和9年度改定への先送り事項となっていて、次回の改定審議で再び取り上げられる事になります。
3,生産性向上への取り組みの強化
注目すべきは、生産性向上への取り組みが広範囲に盛り込まれたことでしょう。短期入所系、居住系、多機能系、施設系のサービスには、3年間の経過措置を設けた上で、生産性向上委員会の設置が義務化されました。同時に、ICT化に取り組み、その改善効果に関するデータを提出することを評価する生産性向上推進体制加算が創設されています。
新たに創設される介護職員等処遇改善加算の算定要件である職場環境等要件では、生産性向上のための業務改善の取組を重点的に実施すべき内容に改められています。それは、業務改善委員会の設置、職場の課題分析、5S活動、業務マニュアルの作成、介護記録ソフト、見守りセンサーやインカムの導入、介護助手の活用などです。
基本的に、厚生労働省から提供されている、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」、「介護分野における生産性向上の取組を支援・促進する手引き」、「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き」、などを参考に進めて行くことになります。
もはや、特に介護施設などにおいては、業務改善やICT化の取組は不可避になっています。しかし、一度にICT機材などを導入することも困難です。生産性向上委員会で、計画的な導入を検討して、毎年、ICT補助金やIT補助金を活用した段階的な業務改善を行うべきでしょう。
介護分野の生産性向上 厚生労働省

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。