居宅介護支援事業所の介護予防支援と総合相談支援事業

居宅介護支援事業所においては、令和6年度は介護予防支援の許認可が可能となります。また、総合相談支援事業が地域包括支援センターからの委託を可能とすることで、新事業として業務が拡大する事となります。
介護予防支援の許認可については、その厚生労働省令案において、介護予防支援を行う者は介護支援専門員とすることが示されています。また、指定居宅介護支援事業者が指定介護予防支援事業者の指定を受けようとする際には、既に指定済みで、事業所の所在地の市町村に提出している事項に変更がない場合には、これらの事項に係る申請書の記載又は書類の提出を省略させることができることが示されています。同時に、市町村長が介護予防サービス計画の検証の実施に当たって指定介護予防支援事業者に対して情報の提供を求めることができるとしました。その内容は、第一号被保険者の状況、介護予防支援の利用者に関する基本的な情報、介護予防支援の経過の記録、サービス担当者会議の開催等の状況、介護予防支援に係る評価、その他市町村長が必要と認める事項です。令和6年度介護報酬改定においては、この市町村長に対する介護予防サービス計画の実施状況等に関して情報提供することを運営基準上義務づけることに伴う手間やコストについて評価する新たな区分を設けることになっています。そのため、予防ケアプランの基本報酬が、地域包括支援センターと居宅介護支援事業所で異なる報酬区分となっています。
結果として、地域包括支援センターの基本報酬と30単位の差が設けられました。同時に、従来は地域包括支援センターへの手数料の支払いがあったことを勘案すると、増収となることに間違いありません。しかし、まだ評価が低いとする意見も多いことは事実です。また、居宅介護支援費の算定に当たっての取扱件数の算出では、指定介護予防支援の提供を受ける利用者数について、現在の2分に1から、3分の1を乗じて件数に加えることと変更されました。より多く、介護予防のケアプランを担当出来る事になります。ZOOMなどを活用したモニタリングを可能とする特例措置によって、介護予防支援の場合は6ヶ月に1回の割合で利用者の居宅を訪問することが可能となりました。ケアプランデータ連係システムなどのICT化を進めることで、今後は予防ケアプランも効率的に業務を進めることの可能性が出て来ているのではないでしょうか。
総合相談支援事業は、令和3年度介護保険法改正で創設された重層的支援体制総合事業のことです。8050問題を抱える地域住民などへの支援体制のため、1、断らない相談支援、2、参加支援、3、地域づくりに向けた支援を市町村が一体的に実施し、介護(地域支援事業)、障害(地域生活支援事業)、子ども(利用者支援事業)、困窮(生活困窮者自立相談支援事業)の相談支援に係る事業の役割を地域包括支援センターに一本化しました。この事業によって、各地域の地域包括支援センターはパンク状態にあります。そのため、業務の中で他に移せるものは移し、委託できるものは委託する方向が示されたのです。それが、介護予防支援の許認可を居宅介護支援事業所に認めることであり、総合相談支援事業の一部を委託する事です。この居宅介護支援事業所における新事業に関しては、様子見の感が強いようです。特に委託報酬次第とする意見が多いと感じます。今後、正式な厚生省令や委託内容が示されるのを待つというのが現状です。いずれにしても、居宅介護支援事業所の役割も大きく変貌する途上であることを示す令和6年度介護報酬改定であると言えます。
資料出展:第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。