新たなる減算の重要ポイント

今回は、令和6年度介護報酬改定に於いて位置づけられた減算のポイントを見ていきましょう。
1,業務継続計画未策定減算と高齢者虐待防止措置未実施減算
令和6年4月より、業務継続計画(BCP)と高齢者虐待防止措置への未対応事業所には減算が適用されます。業務継続計画未策定減算には特例措置があり、基本的には令和7年4月からの適用ですが、高齢者虐待防止措置未実施減算は4月から適用されます。業務継続計画未策定減算は、施設系は3%、その他のサービスは1%となっています。高齢者虐待防止措置未実施減算も1%です。注意すべきは、BCPの義務化は令和6年4月であることには変わりはないという事です。減算とならなくても、運営指導で運営基準違反として指導対象となります。やはり、BCPの作成と高齢者虐待防止措置は年度内に完了しておくことが必要です。また、業務継続計画未策定減算の算定要件に、当該業務継続計画に伴い必要な措置を講ずること。が示されています。BCPの未策定だけでは無く、研修、訓練、見直しの未実施も減算の対象と成るということです。高齢者虐待防止措置未実施減算では、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、専任の担当者の設置の4つを実施して居ない場合に減算となります。
2,訪問介護と居宅介護支援への同一建物減算
同一建物減算は、訪問介護が強化され、居宅介護支援に新たに創設されます。訪問介護では、新たに12%減算の区分が創設されることになりました。前6ヶ月の提供件数の内で、同一敷地内または隣接する建物に居住する利用者が90%以上である場合に適用となります。
また、居宅介護支援は5%の減算となりました。事業所の所在する建物と同一敷地内、または隣接する建物に居住する利用者は、1名から減算です。同一建物に居住する利用者が20人以上である場合に適用となります。今回は5%ですが、次回以降の改定で、訪問介護同様の10%となる可能性も捨てきれません。


第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
3,介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション
現在も、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーションでは、12 月が経過した後は減算が適用されています。今回の改定では、従来の6倍という大きな単位が減算となります。デイケアの場合、要支援1が月20単位から月120単位に。要支援2が月40単位から月240単位になります。しかし特例も示されました。3月に一度以上のリハビリテーション会議を実施してリハビリ計画に反映して、LIFEを活用していた場合には減算が免除されます。介護老人保健施設の短期集中リハビリテーション実施加算においてもLIFEの活用を含む取り組みを行っている場合の新区分が設けられました。今回の改定では、訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算の適用は見送られましたが、広範囲にLIFE関連の加算が拡大しているといえます。
4、身体拘束廃止未実施減算
ショートステイと多機能型に、身体拘束廃止未実施減算が適用されます。経過措置は1年となっています。身体拘束に掛かる委員会の開催、指針の整備、それに基づく研修の3点が未実施の場合に適用されます。訪問サービス、通所サービス、福祉用具、居宅介護支援については、減算にはなりませんが、緊急やむを得ない場合の身体拘束については、記録の作成が義務化されました。記録の内容は、身体拘束の態様、拘束時間、その間の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由です。この4点を、拘束を行う度に利用者毎に記載しなければなりません。また、今回、減算から外されたこれらのサービスでも、次回改定で減算となる可能性が高いといます。
第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。