令和6年度介護報酬改定の総括 

2024.04.03

【第1回】介護職員等処遇改善加算と職場環境等要件の見直し 

6月からは、現行の介護職員処遇改善3加算が廃止となり、新たに創設される介護職員等処遇改善加算に一本化されます。特例として、令和6年度末(令和7年3月)までは、区分Ⅴ(1)-(14)が設けられました。現時点に於いて処遇改善加算Ⅲ区分を算定するなどで、すぐには対応出来ない場合を想定して、新加算の要件をクリア出来ない場合の特例措置とされています新加算のポイントは、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップとするための措置が含められていることです。6月からの新加算の算定率には、2年分の賃上げ分を含んでいます。そのため、6月に移行した段階で算定率は現行の3加算と2月からの支援補助金を合計した加算率より高く設定となりました。この増加分は、6月から前倒しで支給しても良いし、令和6年度は職員には支給せずにプールしておいて、令和7年度に繰り延べて支給しても良いとされています。しかし、繰り延べの方法は2つの問題を抱えています。一つは、繰り延べて増額した部分の賃金相当分が令和8年度以降の加算で補填されないことです。すなわち、8年度以降の支給は自腹となります。2つ目は、繰り延べした部分の収益は令和6年度の収入となって、法人税の課税対象となることです。厚生労働省は、この税金対策として賃上げ促進税制の活用を挙げていますが、一般的ではありません。それらを勘案すると、6月から前倒しでの支給がベストの選択といえるのではないでしょうか。 

 

新加算の算定区分は4区分となっています。現行の3加算の算定要件が、かなり簡素化されていて、算定における事務負担が軽減されています。特に現行の特定処遇改善加算の要件である、全職員をA-B-Cに振り分けて配分の上限と所得制限を設けていた、二分の一要件が廃止となります。特定処遇改善加算Ⅱの算定要件で残る要件は、経験10年以上で介護福祉士を持つ介護職員から1名以上、年収440万円以上の者を求める要件のみです。これも、すでに配置されている場合はそれで問題はありません。しかし、令和7年度からは、同要件で認められている月額8万円の昇給の要件が廃止されます。そのため、新区分のⅠまたはⅡを算定していた場合、年収440万円以上の者を設定出来ない場合は算定区分3にダウンするので注意が必要です。 

 

また、月給改善として求められる部分は、現在のベースアップ等支援加算とは要件が異なり、区分Ⅳの算定率で計算した加算額の二分の一を月給改善として設定する事になります。この要件は令和7年度から適用されます。令和6年度は現在のベースアップ等支援加算および支援補助金で設定した月給改善額を維持することになります。また、現在においてベースアップ等支援加算を算定していない場合は、算定した場合として計算した加算額の三分の二以上を月給改善額として設定することになります。 

 

介護職員等処遇改善加算の算定要件である職場環境等要件では、生産性向上のための業務改善の取組を重点的に実施すべき内容に改められていますそれは、厚生労働省の生産性向上ガイドラインに示されている、業務改善委員会の設置、職場の課題分析、5S活動、業務マニュアルの作成、介護記録ソフト、見守りセンサーやインカムの導入、介護助手の活用などに取り組む事です。この要件は令和7年度からの適用となり、令和6年度は職場環境等要件が適用されます。しかし、小規模事業者にはハードルが高いために、特例措置が設けられました。今回の介護報酬改定全体で、施設系を中心に生産性向上を求める方向は強化されていて、業務改善やICT化に先進的な取り組みを行う介護施設等を評価する生産性向上推進体制加算が創設されています。この加算を算定することで職場環境等要件の生産性向上の部分をクリアするとされました。 

 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。