令和6年度介護報酬改定の総括

【第2回】大きく算定要件の変わった居宅介護支援
居宅介護支援では、ターミナルケアマネジメント加算の対象疾患に制限が無くなりました。これまでは末期ガンのみが対象でしたので、算定対象が大きく拡大したことになります。同時に特定事業所医療連携加算の算定要件におけるターミナルケアマネジメント加算の算定回数が、これまでの5回以上から一気に15回以上にハードルが上がりました。確実に小規模事業者は算定が困難となったと言えます。ケアマネジャーの在籍人数が多い大規模事業所でない限りは難しいのではないでしょうか。とは言え、ターミナルケアマネジメント加算は400単位、特定事業所医療連携加算は月125単位です。可能な限り算定に努力すべきです。また、ターミナルケアマネジメント加算のもう一方の要件である死亡日の居宅訪問もかなりの高ハードルです。関係者に依頼して、利用者の亡くなられた場合の情報を得るようにして、事前にご家族に死亡日の居宅訪問についての了解を得るなど、組織としてシステム的に死亡日の訪問が出来る体制を構築しておくべきです。
6年に一度の医療と介護の同時改定によって、情報連携加算関連も多くが変更が加えられました。入院時情報連携加算では、既存の情報提供期日が3日以内(200単位)と7日以内(100単位)であった算定要件が、当日中(250単位)と3日以内(200単位)に短縮されました。7日も経ったら、すでに病院は準備を終えており遅すぎることが理由です。今後は新たな報酬区分はどちらを算定すべきでしょうか。これは圧倒的に当日中(250単位)です。理由は、入院日以前の情報提供が可能となり算定しやすくなっているからです。これまでの算定要件では、入院日以前の情報提供は不可でした。体調急変による緊急搬送でなければ、通常は持病関連での入院です。ご家族には、一週間程度前には入院日が通知されます。入院日までの間に病院に情報提供すれば良いのですから余裕を持った対応ができます。何らかの理由で入院日前の情報提供が出来なかった場合には、3日以内に切り替えれば良いのです。
もう一点は、通院時情報連携加算です。この加算は前回令和3年度改定で創設された加算です。利用者が病院に通院するときにケアマネジャーが同行訪問して、主治医師と情報交換することで50単位が算定できます。この通院対象に歯科医師が追加されました。令和6年度からケアマネジャーの法定研修カリキュラムが変更となります。誤嚥性肺炎マネジメントが大きく取り上げられる方向です。高齢者の死亡要因で誤嚥性肺炎は高い確率です。その予防においては口腔ケアが重要です。しっかりとケアプランに口腔ケアを位置づけることが求められて、歯科医師との連携も重要であることが示された一例です。加算算定を検討するときは、その意味を理解することも大切な要素となります。
今回の報酬改定で口腔ケアに関しては、訪問系サービスに口腔連携強化加算が創設されました。この加算は、事業所の職員が利用者の口腔の健康状態を評価します。その評価結果を歯科医師と担当のケアマネージャーに報告することで月に一回50単位を算定します。これによって、ケアマネジャーは毎月の利用者の状況を把握して、適切に口腔ケアをケアプランに位置づけることが可能となります。
出典:第239回社会保障審議会介護給付費分科会

小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。