令和6年度介護報酬改定の総括

2024.04.24

【第4回】令和6年度介護報酬改定は加算算定が明暗を分ける 

これまで、介護事業者の中には加算の算定から敢えて避ける風潮がありました。それは、加算の算定によって利用者の自己負担が増加するや、担当のケアマネジャーが加算の算定の少ない事業者を優先とする傾向があったことなどが理由です。しかし、令和六年度介護報酬改定において、基本報酬の引き上げが叶わなかった現実から、これからの収入確保は加算算定が重要なテーマとなっていくことが明らかになりました。そもそも加算とは、国が介護事業者に求めるハードルに報酬をつけたものです。加算をより多く算定する事業所は、国の従ったレベルの質の高い事業所と評価されます。加算算定が出来ない事業所は、国の求めるレベルに達していない質の低い事業所だという事を理解する必要があります。令和6年度介護報酬改定においては、加算の算定が明暗を分けていきます。 

1.訪問介護は特定事業所加算の算定が明暗を分ける 

訪問介護は基本報酬が2%以上も引き下げられました。通常の場合、介護報酬単位が引き下げられた場合の対応策として稼働率のアップと加算算定を進めるのが定石です。しかし、訪問介護は有効求人倍率が15倍を超えており、圧倒的なヘルパー不足の中での稼働率のアップは容易ではありません。他の介護サービスであれば、加算を算定する事でマイナス分をリカバリーすることが考えられます。しかし、特に訪問介護は、加算の種類が最も少ないサービスです。そのような状況下で、唯一の可能性が特定事業所加算の算定です。特に区分Ⅳは3%に加算率であり、この区分を算定することで基本報酬のマイナスは補填できます。算定要件も、会議や研修の実施といった基本要件を満たした上で、サービス提供責任者を規定よりも1名多く配置することが選択肢に加わりました。従来の勤続7年以上の介護職員が30%以上という算定要件とのいずれかを満たすことで算定が可能となったのです。この勤続年数もQ&Aにおいて、同じ法人内であれば、他の介護サービスでの介護職員としての勤務年数を通算できるとされたため、一層に算定しやすくなりました。しかし、すでにこの加算の最上位区分を算定済みの場合はマイナスの補填は不可となって、厳しい事業所運営を強いられます。しかし、もともと特定事業所加算の算定割合が少ないという事実から、多くの訪問介護の経営環境を改善する可能性は高いと言えます。 

2.加算の上位区分が設けられた意味 

定期巡回サービスの基本報酬がマイナス4.4%と最大規模のマイナスとなりました。基本報酬の月額単位としては700単位前後のマイナスです。過去に於いて、ここまでのマイナス査定は平成27年度の小規模デイサービス以来です。そのような中で、総合マネジメント体制強化加算に上位区分が設けられました。もちろん、新たなる算定要件というハードルを越えないと算定できません。その上位区分は200単位のプラスですから、この算定は必須です。では、この200単位はどこから持ってきたのか。それは、既存の区分1000単位を800単位に減額して付け替えたのです。この手法は、他の加算でも多く見受けられます。今回の報酬審議においてメリハリという言葉が何度も語られました。今回はメリハリの改定です。どこかを引き上げたら、どこかを引き下げる。これがメリハリです。基本報酬が700単位下げられた中で、この上位区分を算定することでマイナスは500単位に軽減されます。しかし、上位区分を算定できない場合は、マイナスが900単位に増大します。選択肢は、上位区分の算定しかありません。 

 

今回の加算算定では、同じサービス内での二極化が拡大します。算定基準というハードルを越えられない場合には、事業収益が大きく減少します。今回は、明らかにレベルアップが求められています。この上位区分については、訪問看護の初回加算、特定施設の夜間看護体制加算、老健の初期加算やリハビリテーション・マネジメント計画書情報加算、短期集中リハビリテーション実施加算、かかりつけ医連携薬剤調整加算、多機能型の認知症加算、通所リハのリハビリテーション・マネジメント加算などに設けられています。 

出典:第239回社会保障審議会介護給付費分科会 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。