令和6年度介護報酬改定の検証 

2024.05.08

【第1回】訪問系サービスが厳しい評価に 

今回の介護報酬改定は、すべての介護サービスがプラス改定となった訳ではありません。基本報酬において訪問介護は、30分以上1時間未満の身体介護で見た場合、-2.3%のマイナスとなっています。単位にして6単位の減額です。ホームヘルパー不足が表面化して、経営的に厳しさを増している訪問介護の大きな減額は、介護業界を震撼させました。訪問介護は加算の算定でマイナス分をリカバリしようにも、位置づけられている加算の種類が圧倒的に少ないのが現実です。稼働率を上げて対応しようにも、ホームヘルパーの有効求人倍率が15倍を軽く超えている現状では、それも難しい状況と言えます。

このような状況で算定すべき加算は、特定事業所加算で加算率は請求金額の3%〜20%の5区分となっています。もちろん、算定要件のハードルは高く容易に算定は出来ないのですが優先事項として検討すべきです。その中でも新区分Ⅳは、3%の加算率です。この区分を算定することで基本報酬のマイナスは補填できます。算定要件も、会議や研修の実施といった基本要件を満たした上で、サービス提供責任者を規定よりも1名多く配置することでも算定が可能となりました。従来の勤続7年以上の介護職員が30%以上という算定要件とのいずれかを満たすことで算定出来ます。この勤続年数もQ&Aにおいて、同じ法人内であれば他の介護サービスでの介護職員としての勤務年数を通算できるとされました。もともと特定事業所加算の算定割合が少ないため、多くの訪問介護の収益を改善する可能性は高いと言えます。

問題は、会議や文章での伝達といった基本要件での事務負担の増加です。小規模事業者は経営者やサービス提供責任者が現場に入りっぱなしの状態です。事務負担の増加に対応できないという声も根強くあります。事務負担の軽減策は、業務改善とICT化が一般的です。そのためにICT補助金や助成金を有効活用することが求められます。しかし、これらも小規模事業者にはハードルが高いようです。八方ふさがりに近い状況で、有効なアドバイスを送ることが出来るブレーン確保や、業務負担を軽減するためのサービスの活用がキーポイントになるでしょう。従来の手法が通じなくなっています。今までが、では無く、これからどうするか。思考の転換が急務となりました。 

 また、定期巡回サービスは4%以上のマイナスとなりました。月額で700単位前後のマイナスです。そのため、総合マネジメント体制強化加算で新たに設けられた上位区分の算定は必須と言えます上位区分は、従来より200単位のプラスです。この200単位は、既存の報酬区分を200単位減らして付け替えたものです。上位区分を算定する事で、700単位のマイナスが500単位に圧縮できます。しかし、現状維持の場合は、マイナスが900単位に拡大することになります。上位区分の算定には、新たな算定要件をクリアする必要です。今回の介護報酬改定は、現状維持という選択が出来ない厳しい改定でもあるのです。 

 訪問看護も多くの加算が創設されました。専門管理加算、初回加算の上位区分、診療報酬に合わせて増額されたターミナルケア加算、緊急時訪問看護加算の上位区分も必須です。また、理学療法士等のサービスにおいては、基本報酬及び12 月を超えた場合の減算が厳格化されました。①、訪問看護事業所における前年度の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること。②、緊急時訪問看護加算、特別管理加算及び看護体制強化加算をいずれも算定していない。のどちらかに該当した場合には、1回につき8単位を所定単位数から減算となります 

第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料  

【参考資料1】令和6年度介護報酬改定における改定事項について[5.8MB]

 

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。