介護職員等処遇改善加算の算定要件の最終確認

【第1回】介護職員等処遇改善加算の算定ポイント
1.キャリアパス要件
加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳには算定要件においてキャリアパス要件が定められており、これを満たすことがポイントです。
・キャリアパス要件Ⅰ
就業規則や賃金規定等でキャリアアップの規定を明示していることをいいます。
・キャリアパス要件Ⅱ
介護職員と意見交換して、資質向上の目標と具体的な研修スケジュール等を作成し、資格取得のための通学に対して勤務シフトで便宜を図ったり、研修費用の一部を負担するなどをいいます。
・キャリアパス要件Ⅲ
Ⅰで示されたキャリアアップの役職について、どのような場合に任命され昇給するかを、「経験」「資格」「評価」のいずれかの基準で明確にすることです。具体的には、次のような仕組みをいいます。
【経験】勤続年数や経験年数によって昇進・昇給する仕組み
(例:職員の勤務年数が3年未満は一般職員、3~6年は班長、6年超は主任に昇進するなど)
【資格】職員の取得した資格に応じて昇進・昇給する仕組み
(例:資格は一般職員、介護福祉士になると班長、特定介護福祉士になると主任に昇進するなど、又は単に介護職員を対象に、介護福祉士手当、特定介護福祉士手当、社会福祉士手当などを複数設ける形でもよい)
【評価】昇進試験や人事評価の結果に基づき昇進・昇給する仕組み
(例:班長試験や主任試験などの昇進試験を設けて、合格すると昇進するなど)
・キャリアパス要件Ⅳ
勤続10年以上の介護福祉士資格を持つ、介護職員から1名以上、年収440万円以上のものをつくること。
・キャリアパス要件Ⅴ
訪問介護の場合は、介護職員の中で、介護福祉士資格を持つ職員が30%以上であること。他の介護サービスでは、サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡを算定しているなどの要件を満たすこと。
これらのどれかを用いるか、組み合わせて昇進・昇給の仕組みを設け、就業規則等の書面に整備します。
加算の算定には、給与以外の処遇改善(職場環境等要件)を実施して報告することが必要です。
加算Ⅰ・Ⅱを算定するには、令和7年度からは、6区分のうちから、2つ以上、生産性向上要件は3つ以上の取組み(職場環境等要件)を記載して、すべての介護職員に周知しなければなりません。また、年度内に実施した処遇改善に要した費用をすべての介護職員に周知していることも必要です。
2.賃金改善の実施に係る基本的な考え方
賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち対象とする項目を特定した上で行います。この場合、賃金水準を低下させてはなりません。また、基本給による賃金改善が望ましいとされています。
令和6年度に、令和5年度と比較して増加した加算額については、増加分に相当する介護職員その他の職員の賃金改善を新規に実施しなければなりません。 その際、新規に実施する賃金改善は、ベースアップ(賃金表の改訂により基本給又は決まって毎月支払われる手当の水準を一律に引き上げることをいう。)により行うことを基本とします。
ただし、ベースアップのみにより当該賃金改善を行うことができない場合には、その他の手当、一時金等を組み合わせて実施しても差し支えありまえん。介護サービス事業者等の判断によって、介護職員以外の職種への配分も含め、事業所内で柔軟な配分が可能です。 一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所のみに賃金改善を集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこととされています。
3.令和7年度の更なるベースアップにつなげるための工夫
令和6年度に令和5年度と比較して増加した加算額の一部を令和7年度に繰り越して、令和7年度分の賃金改善に充てることも可能です。その際、令和7年度の賃金改善の原資として繰り越す額の上限は、令和6年度に、仮に令和5年度末時点で算定していた旧3加算を継続して算定する場合に見込まれる加算額と、令和6年度の新加算等の加算額を比較して増加した差額となります。繰越額については、処遇改善計画書・実績報告書に記載して提出します

出典:厚生労働省 介護職員の処遇改善
事業者向けリーフレット[1.1MB]
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。