介護職員等処遇改善加算の算定要件の最終確認(2)

2024.06.12

【第2回】キャリアパス要件の詳細解説

区分1 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴを満たす
区分2 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳを満たす
区分3 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを満たす
区分4 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱを満たす

1.キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等) 

次の①から③までを全て満たすことが必要です。 

①介護職員の任用の際における職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む)を定めていること。 例えば、一般職員、班長、主任といったように、介護職員が登ることが出来る階段を設ければ足ります。該当者が居ない場合は、空き職種であっても、その仕組みがあれば問題ありません。

② ①に掲げる職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く)について定めていること。 この場合、必ずしも厳密な賃金規程は必要ありません。各階段での給与の目安の金額が分かる状態で問題ありません

③ ①及び②の内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。この場合、新入職員にも周知していることが必要です。

ただし、常時雇用する者の数が10人未満の事業所等など、労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所等においては、就業規則の代わりに内規等の整備・周知により上記③の要件を満たすこととしても差し支えありません。 

2.キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)

① 介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及びa又はbに掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。

a 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等(OJT、OFF-JT等)を実施するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。 

b 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。 

この時の意見の交換は、様々な方法によって、可能な限り多くの介護職員の意見を聴く機会(例えば、対面に加え、労働組合がある場合には労働組合との意見交換のほか、メール等による意見募集を行う等)を設けるように配慮することが望ましいとされています。資質向上の目標とは、事業者において、運営状況や介護職員のキャリア志向等を踏まえ適切に設定します。一例として、次のようなものが考えられます。

1 利用者のニーズに応じた良質なサービスを提供するために、介護職員が技術・能力(例:介護技術、コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力、マネジメント能力等)の向上に努めること

2 事業所全体での資格等(例:介護福祉士、介護職員基礎研修、訪問介護員研修等)の取得率の向上

② ①について、全ての介護職員に周知していること。 

3.キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等) 

次の①及び②を満たすこと。 

① 介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次のaからcまでのいずれかに該当する仕組みであること。 

a 経験に応じて昇給する仕組み 

「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。 例えば、職員の勤務年数が3年未満は一般職員、3〜6年は班長、6年超は主任に昇進するなどです。

b 資格等に応じて昇給する仕組み 

介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組みであること。ただし、別法人等で介護福祉士資格を取得した上で当該事業者や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。 例えば、単に介護職員を対象に、介護福祉士手当、特定介護福祉士手当、社会福祉士手当などを複数設けて、資格を取る度に昇給する仕組みでも良い。この場合の手当の金額に定めは有りません。この規程があれば良く、該当する職員がいない場合は、支給することはありません。

c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み 

「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。 例えば、班長試験や主任試験などの昇進試験を設けて、合格すると昇進するなどです。

② ①の内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。 

4.キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)

経験・技能のある介護職員(経験10年以上の介護福祉士資格者)のうち1人以上は、賃金改善後の年収が440万円以上であること。既に居る場合は、新たに設ける必要はありません。ただし、以下の場合など、例外的に当該賃金改善が困難な場合であって、合理的な説明がある場合は例外措置として設けなくても良いとされています。

・ 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合 

・ 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合 

また、令和6年度中は、旧介護職員等特定処遇改善加算同様に、賃金改善額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均とする。)以上の職員を置くことにより、上記の要件を満たしますが、令和7年度からは廃止されます。 

5.キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)

サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していることです。

具体的には、新加算等を算定する事業所又は併設する本体事業所においてサービス類型ごとに別紙1表4に掲げるサービス提供体制強化加算、特定処遇改善加算、福祉・介護職員処遇改善加算等を算定する事業所のことです。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。