2024年中の行うべきこと(3)
【第三回】加算を積極的に算定しよう
令和6年度介護報酬改定も一段落して、その検証を行う時期となっています。私の支援先の多くは増収、増益となる結果となりました。新たに創設された加算や上位区分も、当然のように算定することが出来ました。これらの施設の特徴は、各部門の責任者が加算算定への高い意識を持っていたことです。加算算定は、職員側にやらされている感があっては中々進みません。加算算定によって増える事務作業を軽減するために、ICT化や賃金改善を同時並行で進めることが重要です。そのため、増収分とIT補助金を活用して介護記録用のタブレットを増やしたり、見守りセンサーの導入を進める施設が多いのはこのためです。実は、地域で一番を競っている介護施設のトップの指示はシンプルです。加算をすべて算定することのみを指示しています。算定できていない加算は、いつまでに算定出来るかを職員に考えさせています。報酬単位が、3単位でも300単位でも関係なしです。このようなトップがいる介護施設は確実に業績が伸びています。ICT化も積極的に取り組んでいます。そして、ICT化の進んでいる施設には、若い優秀な職員が集まるのです。職員の若返りを図るにはICT化は不可欠です。
これまで、介護事業者の中には加算の算定を敢えて避ける風潮がありました。それは、加算の算定によって利用者の自己負担が増加することも大きな理由です。また、担当のケアマネジャーが加算算定の少ない事業者を優先する傾向があったことも影響しています。しかし、これは介護業界の平均利益率が8%を超えていた過去の時代の考え方です。当時は基本報酬だけで収益の確保は十分で、加算を算定することは儲け主義である的な評価が横行していました。この傾向は、未だにケアマネジャーの一部が引きずっているのではないでしょうか。
令和六年度介護報酬改定において基本報酬の引き上げが実質的に叶わなかったことから、加算算定が重要なテーマとなりました。そもそも加算とは、国が介護事業者に求めるハードルに報酬をつけたものです。加算をより多く算定する事業所は、国の従ったレベルの質の高い事業所と評価されています。加算算定が出来ない事業所は、国の求めるレベルに達していない質の低い事業所です。どのような商品やサービスでも質の高いものは価格も高いでしょう。価格の安いものはそれなりです。介護サービスも同様で、利用者負担は一割に過ぎません。介護事業の経営においては、加算の算定が明暗を分けます。報酬改定の審議においてメリハリという言葉が何度も語られました。今回はメリハリの改定です。どこかを引き上げたら、どこかを引き下げるのがメリハリです。今後の加算算定次第では、同じサービス内での二極化が拡大するでしょう。
加算算定の問題は、会議や文章での伝達といった基本要件での事務負担の増加です。小規模事業者においては、管理者やサービス提供責任者が現場に入りっぱなしの状態でしょう。そのため、事務負担の増加に対応できないという声も強くあります。事務負担の軽減策は、業務効率化とICT化が一般的です。そのためにICT補助金や助成金を有効活用することが重要です。しかし、これも小規模事業者にはハードルが高いといえます。八方ふさがりに近い状況で、有効なアドバイスを送ることが出来るブレーン確保や、業務負担を軽減するためのオンラインサービスの活用がキーポイントになるでしょう。従来の手法が通じなくなっています。今までが、では無く、これからどうするか。思考の転換が急務です。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。