2024年度運営指導対策(1)

2024.07.31

【第一回】今更聞けない運営指導、そもそも運営指導とは何か

1. 年々増加する行政処分

平成12年に介護保険法がスタートして以来、コロナ禍以前には一年に200件以上の指定取消や効力停止処分といった行政処分が行われていました。コロナ禍の3年弱については、運営指導件数は激減しましたが、令和5年度からコロナ禍前の水準に戻りつつあります。効力停止処分は3ヶ月から6ヶ月の業務停止が多いようです。業務停止の期間中は指定の取消同様に介護保険を使ったサービス提供は出来ません。行政処分の内容は一般にも公表されるために地域の住民が知ることとなり、介護事業所と経営者の社会における信用が大きく傷つきます。

2. 指定取消は最大の経営リスク

介護サービス事業を営む上で最も大きな経営のリスクは、行政処分である指定の取消です。指定取消を受けると介護保険を利用したサービスの提供が出来なくなります。指定取消の行政処分を受けた会社の役員は、それから5年間は介護保険サービスを営む会社の役員や責任者などに就くことが出来ません。複数の拠点がある事業者には連座制が適用されて、問題の拠点だけではなく会社全体が行政処分を受けます。利用者のためにも職員のためにも、行政処分を受けるような経営上のミスは決して犯してはいけないのです。

3. 運営指導の種類

運営指導と一言で言っても、実はいろいろな形で実施されています。

毎年行われている「集団指導」は、指導という名称は付きますが、実際は役所主催の行政制度の説明会的な位置づけに過ぎません。集団指導に参加したとしても運営指導が終わったことにはなりません。

一般的な「運営指導」は、通常は実施日の一ヶ月前に、指導通知書の郵送などで事前通知を行った上で実施されます。運営指導は必ず複数の担当者で行われます。事業所の規模に関わらず一日程度で終了しますが、規模が大きい事業所や施設の場合は担当者の人数が増えます。小規模な介護事業所は2名。大規模事業所や介護施設は4〜8人での実施が多いようです。

「特別指導」は、前回の運営指導で大きな不正が発覚した場合や法令違反などが疑われる場合、運営指導後の改善が長期間為されないなどの事業所に対して重点的あるいは継続的に行われる指導のことです。

「書面指導」とは、小規模な事業所に対して書面で行います。書類上で問題がなければ運営指導を省略もしくは延期し、問題がある事業所には実地指導に入るものを言います。

4. 実地指導の頻度

運営指導の頻度は、5年から6年の間隔で行われることが多いようです。これは、介護事業の許認可の指定期間が6年であるため、役所の心理として、更新前に実地指導を行って問題の無い状態で更新を行いたいという意向があるためです。また、新規の介護事業所に対して事業所番号が交付されてから1年前後に最初の運営指導を実施する保険者がほとんどです。これは、開業間もない内に運営状況を確認して、以降の適正な運営を指導する目的があります。

5. 抜き打ちの指導もある

運営指導を行うにあって自治体は、事業所にあらかじめ文書によって通知することが原則となっています。そのため、通常は、一ヶ月程度前に運営指導の対象となった事業所に事前通知書が郵送されています。しかし、事業所での虐待の疑いがある場合には、事前通知は不要です。これを無通知指導と言います。問題は、虐待の疑いでの実施が可能で、その証拠などは問われません。そのため、この要件は有名無実になっているようです。実際に無通知指導を受けたという話を当事者から聞くようになっていますので日頃からの準備は欠かせません。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。